DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がYahoo! Financeのインタビューで、年末年始に反発した株式市場についてコメントしている。
年末年始の上げ相場
2022年はインフレ抑制のためのアメリカの金融引き締めで株式市場が下落した年である。だが秋頃にインフレ率の急落が始まると、金融引き締めも必要なくなると織り込んだ株式市場が急反発を始めた。米国株は次のように推移している。
インフレ率が下がっているにもかかわらずGDP成長率はそれほど落ち込んでいないとして、ソフトランディング期待さえ囁かれた2ヶ月だったが、今ではそのソフトランディング期待も消えかかっている。
だが投資家がソフトランディングに淡い期待を抱き、市場では上げ相場が続く中で、経済と株価に悲観的な従来からの見通しを維持した人物がいる。それがガンドラック氏である。
この2ヶ月に何が起こったのか。ガンドラック氏は次のように説明している。
多くの投資家や個人投資家が理解していないのは、相場は年末に方向転換することが多いということだ。それは何か天文学的な理由があるわけではなく、単に資金の流れだ。
上げ相場にしても下げ相場にしても、市場に大きな動きがあった時、年末にはポジションの再構成が起こることが多い。
損失確定の売り
どういうことか。投資家は年度末時点での利益(あるいは損失)に基づいて税金を支払うことになる。
だから年末に含み損を抱えている場合、利益を圧縮したい投資家はその銘柄を売却して損を確定させようとする。そうすれば税金が少なくなるからである。
ガンドラック氏は次のように続けている。
2022年はコモディティ以外すべてが下落した相場だったが、多くの投資家が損をしているときには、年末に損失確定の売りが出る。
それは2022年の11月と12月にはかなり激しい売りになった。それが全部終わった後、1月に向けて資金が再び振り分けられたわけだ。
このように年末には急激な資金の逆流が起こりやすい。
多くの投資家が「高金利による株価下落は終わった」と思っていたはずだ。筆者も市場のその雰囲気を感じ取ったから一時的に株の空売りを外していた。
その2ヶ月では2022年の下げ相場で売られた銘柄が反発した。ハイテク株が上がり、債券が上がった。だがガンドラック氏はこう続けている。
高利回り債が上がり、新興国市場が上がり、コモディティ以外のすべてが上がった。完全に2022年の逆だ。だが今の状況はと言えば、以前の状況に戻っている。
以前の状況に戻っている。つまりはインフレと高金利、そして株安である。
結論
インタビューで「リスク回避を始めるべきか」と聞かれ、ガンドラック氏は次のように返している。
われわれはリスク回避を2021年の第4四半期に始めている。
今更だと言いたいのだろう。
一部の投資家は、去年の終わりから新たな上げ相場が始まったかのように感じていただろう。だが終わってみれば、米国株は2022年の始めから一貫して下落しているだけである。
だが売り方にとっては、短期的であっても上げ相場は可能であれば避けたいだろう。だからソフトランディング期待のような怪しげな理論で株価が上がっている時に出来ることは、良いタイミングで空売りを仕込むことくらいである。
短期的なトレーディングは上手く行く時と行かない時がある。だが株式市場の利益確定のタイミングについては2022年の始めに空売りを仕込んだ時からかなり上手く行っており、天井から今までの下げ幅以上の利益を出せている。
だが重要なのは長期的トレンドを逃さないようにすることである。このソフトランディング期待というから騒ぎを一番的確に当てたのは、実はジム・ロジャーズ氏だったりするから面白いものである。彼は次のように述べていた。
一直線に上昇するものも一直線に下落するものも存在しない。調整を交えながら上げと下げを繰り返すのが普通だ。そしてインフレにも同じことが言える。
原油の価格が高騰し、その後落ち着く。人々は「インフレが収まった」と考える。だが多くの場合一時的なものだ。