ドラッケンミラー氏も米国株買い増し、Amazon.comは全株売却

引き続き機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fである。ジョージ・ソロス氏に続き、今回はソロス氏のクォンタム・ファンド時代の弟子であるスタンレー・ドラッケンミラー氏のファミリーオフィス、Duquesne Family Officeのポートフォリオを解説してゆく。

ドラッケンミラー氏も米国株に強気か

アメリカのインフレ率が下落を開始してから後、弱気一辺倒だったヘッジファンドマネージャーのポートフォリオに変化が見られる。ソロス氏が米国株を大幅に買い増したのもその1つである。

ではその弟子のドラッケンミラー氏がどうしているのかと言えば、結論から言えば彼も米国株を買い増している。Form 13Fに報告されているポジション総額は18億ドルから20億ドルに増額されている。

師弟ともに同じ動きというのは、米国株の先行きを暗示しているのだろうか。アメリカの株価指数S&P 500のチャートは次のようになっている。

Amazon.comは全株売却

ポートフォリオの中身だが、まずハイテク株から見てゆこう。

去年後半にはソロス氏とドラッケンミラー氏の両方がハイテク株、しかもAmazon.comを購入して話題になった。

恐らくは去年前半に高金利で暴落していたハイテク株が、インフレ率下落からの低金利トレンドの中で反発してくることを期待したものなのだが、Amazon.comは低金利の恩恵を受けながらも決算が振るわず株価は低迷したままである。

Amazon.comの株価チャートは次のようになっている。

結果として、以下の記事で報じた通り、ソロス氏の方はAmazon.comの株式を半分以上売却し、代わりにGoogleの親会社のAlphabetを購入している。

そしてドラッケンミラー氏の方はどうかと言えば、こちらは1億ドルあったポジションを全て売却している。

0.5億ドル保有していたMicrosoftも全株売却しており、代わりに半導体大手のNVIDIAを0.9億ドル、Facebookの親会社のMETAを1億ドル保有していることから、銘柄入れ替えということだろう。

ちなみに買い増した2銘柄は今年に入ってともに良好なパフォーマンスとなっている。NVIDIAの株価は以下の通りである。

METAの方も、第4四半期の何処で買ったかにもよるが、反発している。

ちなみに筆者もNVIDIAは良いチョイスだと思う。飽和状態のIT業界の中で、GPUはまだ伸びる余地のある産業の1つである。

ちなみにソロス氏がAmazon.comの代わりに選んだAlphabetはそれほど良いパフォーマンスとは言えない。

ソロスファンドは現在CEOのドーン・フィッツパトリック氏が運用しており、ソロス氏自身は大局観は共有しているだろうが個別銘柄選択に関わっているとは思われず、フィッツパトリック氏は優れたマクロ投資家だが個別銘柄選択で並外れているとは聞かないので、ここではドラッケンミラー氏の銘柄選択能力が勝利したということだろう。

ちなみに長らく最大ポジションとなっている韓国のオンライン販売大手Coupang(韓国のアマゾンと呼ばれる)はほぼポジションを維持して3億ドルとなっているが、こちらは横ばいである。

製薬株買い増し

ハイテク株以外がどうなっているかと言えば、前回9月末の開示でCoupangに次いで2番目に大きいポジションに躍り出た製薬会社のEli Lillyだが、今回は更にポジションを増やして2.7億ドルとなっている。

Eli Lillyは米国株の大半が下落した2022年の相場で大きく上昇した珍しい銘柄だが、今年に入ってからのパフォーマンスはそれほど良くない。Eli Lillyの株価チャートは次のようになっている。

利上げが続く中でもソフトランディング期待が見え始めた今、ディフェンシブ銘柄である製薬株には厳しい状況だろうか。

だがまだ分からない。本当にインフレが下がっても経済成長率は下がらないのだろうか? 景気後退は避けられるのだろうか。これについてはまた記事を書きたいと思っている。

結論

ということで、ソロス氏に続きドラッケンミラー氏も米国株を買い増している。ハイテク株についても銘柄変更をしただけで規模は縮小していないので、ディフェンシブ銘柄である製薬株の買いも含め、ソロス氏と同じく金利低下・景気後退・株高に賭けているように見える。

ちなみにハイテク株の多くが何故まだ低迷したままかということについては既に記事を書いているのでそちらを参考にしてもらいたい。ソロス氏とドラッケンミラー氏は強気のようだが、ジェフリー・ガンドラック氏のように弱気の論者もいる。

2022年とは違い、専門家の間でかなり意見が分かれている相場だと言える。