ガンドラック氏: 株価はまだ下落する、ハイテク株は30%暴落する

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がUBSのインタビューで2023年の株式市場の見通しについて語っている。

2023年の株式市場

米国株は2022年に下げ相場を経験した後、年の終盤からはある程度横ばいを続けている。S&P 500のチャートは次のようになっている。

アメリカにおけるインフレの減速から、Fed(連邦準備制度)の利上げの手が弱まるとの予想もあり、2022年に高金利で下落した株式市場はやや上向き始めているようにも見える。

だがガンドラック氏は米国株に弱気である。彼は次のように述べている。

企業利益は下方修正されなければならないと思う。景気後退に入ろうとしている時期には非常に典型的なことだ。

企業利益の下方修正はもう始まっているが、これからも続くだろう。ほとんどの人が想像しているよりも大きく修正される。わたしの予想では15%の下方修正だ。

ガンドラック氏は2023年のアメリカ経済の景気後退を不可避のものとみなしている。

これが株価にどう影響するかである。

株価の計算方法

2022年の強力な利上げの後、2023年は利下げも想定されている中、実体経済が弱くとも金融緩和によって株価が上昇するということも考えられる。

だが景気後退時に株式投資家が考えなければならないのは企業利益の減少である。事実、2023年の企業利益の予想値は去年終盤からどんどん下方修正され続けている。アメリカのGDPはまだプラス成長で保たれているが、株主にとってもっと重要な企業利益はそうではないのである。

ところで株価は以下の計算式で計算される。

  • 株価 = 1株当たり純利益 x 株価収益率

純利益は要するに企業利益であり、ガンドラック氏は15%の下方修正を見込んでいる。

もう片方の株価収益率は金利に影響される。だから金利と企業利益を考えれば、株価を予想することが出来る。

そしてガンドラック氏は金利については次のように述べている。

わたしは実質金利が今年前半にかけて横ばいで推移すると考えているから、企業利益が下方修正されるなら、株価は企業利益と同じだけ下落しなければならないだろう。

つまりは15%の下落ということである。もう一度チャートを載せると、S&P 500で言えば3,400ドル近辺まで下がるということになる。

ハイテク株は更なる下落に

そしてガンドラック氏はハイテク株に対しては更に厳しい見方をしている。

ハイテク株やミーム株は更に少なくとも30%は下落しなければならないだろう。

ハイテク株に対しては様々な見方がある。ガンドラック氏も予想する通り、2023年は金利低下が想定されており、金利上昇で大きく売られてきたグロース株が復活すると見る向きも少なくない。

例えばジョージ・ソロス氏やスタンレー・ドラッケンミラー氏はハイテク株を買っている。

師弟両方が買っているAmazon.comの株価を例に上げてみると、次のようになっている。

グロース株は金利上昇に弱く、2022年は酷い弱気相場となったが、金利低下を受けて最近は少しリバウンドの兆しが見える。

ガンドラック氏はFANG株(Facebook、Amazon.com、Netflix、Google)やグロース株全般のこれまでの値動きについて次のように振り返っている。

2020年後半に株式市場はローテーションを行ない、FANGやグロース株から資金が逃避し、バリュー株へと向かった。

FANGはそのまま完全に降伏し続けている。FANGは他の株式を大きくアンダーパフォームしているが、まだ十分ではない。

ガンドラック氏は金利低下の環境でもハイテク株にとって厳しい年になると予想しているようだ。

結論

さて、読者はどう考えるだろうか。ソロス氏らのように、金利低下からハイテク株の復活を考えるのも当然理屈のあることである。ちなみにハイテク株に関する筆者の意見は次の記事に書かれている。

だが前から書いている通り、ハイテク株だけではなく今年の株式市場は、金利低下のプラスの影響と企業利益の低下のマイナス影響の両方を受ける相場となる。筆者は全面的に自分に有利な相場でなければ賭けないので、米国株の空売りは去年の内に手仕舞っている。

筆者の今年のトレードは金利低下とドル安である。

一方で、筆者はやっていないが、金利上昇が見込まれかつ企業利益も減少するであろう日本株はもしかすれば空売りの好機かもしれない。今年やるならこちらだろう。

また、ガンドラック氏と同じ企業利益と株価収益率による株価の予想を、同じ債券投資家であったスコット・マイナード氏もやっているので、比較してみても面白いかもしれない。