DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がFox Businessによるインタビューで、2023年のドル相場について語っている。
2022年ドル高トレンドの転換
2022年は物価抑制のために行われたFed(連邦準備制度)の金融引き締めでドル相場は大きく上がったが、その転換を最初に予想したのは元クォンタム・ファンドのスタンレー・ドラッケンミラー氏だっただろうか。以下は去年6月の記事である。
そのドル相場についてガンドラック氏は次のように語っている。
ドルは下落するだろう。それはもう始まっている。
ドラッケンミラー氏の予想通り、そしてガンドラック氏の言う通り、ドル相場は2022年の終盤に急落を開始した。
ドル円の動きは読者も知っているだろうが、ユーロドルのチャートを見てみてもドル安トレンドが始まっていることが分かる。上方向がドル安ユーロ高である。
ドル安の理由
きっかけはアメリカのインフレ率が急落を開始したことである。それは今も継続している。
物価高騰に対応するためにFedの金融政策が引き締め的だったのが、インフレ率が急落すればどうなるだろうか。ガンドラック氏は次のように説明している。
Fedは他の中央銀行と比較してどんどん緩和的になってゆく。
2022年にはFedは他の中央銀行より引き締め的で、ドルは大幅に上がった。だがFedは引き締めをやり過ぎたため、これから緩和的になる。よってドルは下がるだろう。
ガンドラック氏はインフレ率が上昇を続けていた時にも、利上げは既にやり過ぎであり、アメリカ経済を必要以上に冷やしてしまうと主張してきた。
そしてその後すぐにガンドラック氏の予想通りインフレ率は下がり始めた。だからもう利上げは必要ないということである。
タカ派姿勢のパウエル議長
ちなみにFedのパウエル議長自身は、インフレ率が下がる中でも利上げを継続すると主張している。
だがインフレ率が下がり、景気後退と失業率の上昇が生じると、アメリカ国民からインフレとともに経済も殺してしまうFedの引き締めに怨嗟の声が上がるだろう。
そのときにもパウエル氏が引き締めを続けられるのかどうかを疑問視する声が専門家から上がっている。
だがそれは半年以上先の話である。以下の記事で見た通り、アメリカ経済においてまだ失業は増加していない。
だが、今後半年に関する限り、パウエル氏の態度は金利やドル相場とは関係がない。
何故ならば、1970年代の物価高騰時代においては、インフレを殺しきれなかった第1波と第2波においても、当時のボルカー議長がインフレを殺しきった第3波においても、インフレのピークがほぼ金利のピークとなっているからである。
ボルカー氏のインフレ退治のケースであっても、政策金利がそのまま横ばいになるようなことにはならない。だからどちらにしてもドルは下落することになる。
結論
別の記事で紹介したように、ガンドラック氏も筆者と同じようにFedの利下げを予想している。
だから少なくともあと半年はアメリカの金利低下・ドル安がトレンドになる。今回のインフレで第2波があるのかどうかは、半年後に考えるべきことだろう。
また、ドル円について言うならば、日本のインフレ率上昇で日銀が利上げを強いられていることもあり、2023年は強烈なドル安円高の年になるだろう。
ちなみに1月18日の日銀の金融政策決定会合は現状維持だったが、上の記事で述べたように短期的な日銀の動きには意味がない。一応黒田氏の記者会見の内容を精査してみたが、取り上げる価値のあるコメントを見つけることが出来なかった。
2連続の実質利上げを期待していた金融市場では、会合結果を受けてドル円が一時的に急上昇したが、数時間でほとんど元に戻っている。
市場は日銀の言うことに意味がないことを知っているのである。今後の成り行きは日銀の実質利上げを事前に予想したスコット・マイナード氏が語ってくれているので、そちらを参考にしてもらいたい。