先日発表されたアメリカのインフレ率が再び急減速だったことを受け、Fed(連邦準備制度)の連銀総裁たちが1年ほど続いている利上げの停止について話し始めている。
アメリカのインフレ急減速
12月のインフレ率が6.4%となり、去年のピークである9.0%からかなり急速に下落してきたことで、中央銀行のメンバーの態度も変わり始めている。
このままのペースで下落すれば(そう予想するわけではないが)、今年の後半には2%に達するほどの勢いである。
実際には少なくとも6月くらいまでは原油価格の下落効果でこのまま下落を続け、その後はまだ(CPI統計の上では)減速していない住宅とサービスのインフレ次第だろう。CPIの内訳について詳しくは前回の記事を参考にしてほしい。
インフレ減速とアメリカの利上げ
さて、これでアメリカの利上げがどうなるかである。
CPI発表後、Fedの連銀総裁たちが次々に感想を表明している。例えばリッチモンド連銀総裁のバーキン氏は次のように言っている。
経済は確かに抑制されており、そのプロセスにおいてインフレは恐らく抑制されている。その意味では今後の利上げについてわたしはこれまでとニュアンスを変えることができるだろう。
中央銀行家らしく慎重な言い方ではあるが、下落しているインフレ率を明らかに歓迎している。
アトランタ連銀総裁のボスティック氏はもう少しあからさまに次のように語っている。
喜ぶべきニュースだ。
インフレが落ち着き始めていることを示している。利上げを緩めることが出来るのではないかという安心を与えてくれるものだ。
そしてフィラデルフィア連銀総裁のハーカー氏は更に具体的に利上げ幅について語っている。
これからは0.25%の利上げが望ましくなるだろう。
金利が5%以上になり、そこで金融政策が自分の仕事を果たすまで金利を留めれば、それで十分にインフレを抑制することができるだろう。
さて、これをどう考えるかである。
中央銀行家の言葉を文字通りに取ってはいけない
まず最初に言っておくべきなのは、中央銀行家の言葉を文字通りに取ってはいけないということである。
例えば「0.25%の利上げが望ましい」の部分だが、筆者は少し吹き出してしまった。現在の市場の状況を理解している人ならば同じように感じると思う。何故ならば、次回の利上げが0.25%であることはCPI発表前から市場が織り込んでいることであり、今更何を言っているのかということである。
では何故ハーカー氏がわざわざ「0.25%だ」と強調したかと言えば、Fed自身が0.5%の可能性について言い続けており、市場はそれをまったく信じていなかったが、あたかも「CPIが落ち着いたので0.25%にすると決めた」ように振る舞うことで市場の織り込みに合わせたのである。
だから、ジェフリー・ガンドラック氏が次のように言ったことはまったく正しい。
Fedが金利を決めてるんじゃない。
債券市場が金利を決めているんだ。
Fedが市場の織り込みを後追いしているのはもうずっと前からのことである。だからこう読み取るべきだ。彼らが「インフレは一時的で利上げは必要ない」(2021年)と言えばもうすぐ利上げするという意味であり、「力強い利上げを続ける」(2022年)と言えばもうすぐ利上げを停止するという意味であり、「利上げを停止して金利を高い水準で維持する」(2023年)と言えば利下げをするという意味なのである。
引き続き、短期金利は低下し、ドルは下落を続けるだろう。それだけのことである。