Guggenheim Partnersのスコット・マイナード氏がBloombergのインタビューで米国株の適正水準を計算している。そして彼の計算によれば、その結果は株式投資家にとって良いものではなさそうだ。
金融引き締めとアメリカ経済
アメリカではインフレ率は減速し、実体経済も景気後退入りが予想されているが、それでもFed(連邦準備制度)は利上げを止めようとしていない。
Fedの経済予想については以下の記事で説明した通りだが、Fedは来年までに5.1%まで利上げをして、それでも経済成長率は0.5%までしか落ちないと予想している。
この予想についてマイナード氏はこう述べている。
わたしはいつもデータに基づいて話をする。
そしてここで持ち出すことのできる過去のデータの1つは、Fedの経済予想は常に間違ってきたということだ。
それは事実である。2018年にはパウエル議長は金融引き締めを行ない、それは株価には影響を与えないと主張した。そして株価は暴落した。
2021年にはパウエル氏はインフレは一時的だと主張した。そして物価は高騰した。
パウエル氏にせよ黒田氏にせよ、こういう連中の経済予想をいまだにまともに受け取っている人がいること自体筆者には驚きなのだが、人には信仰の自由がある。
だが投資家は現実に向き合う必要がある。実際にパウエル氏が言うように金利が5.1%まで上がれば経済はどうなるか? マイナード氏は次のように言う。
Fedが言う通り、本当に金利が5.1%まで上がるのであれば、実体経済はかなり厳しい景気後退に入るだろう。
マイナード氏の米国株予想
その時株価はどうなるのか。
株価の基本は1株当たり利益と株価収益率である。株価は以下の式で計算できる。
- 株価 = 1株当たり利益 x 株価収益率
つまり、1株当たり利益と株価収益率が分かれば株価の予想ができるということである。
まず1株当たり利益についてマイナード氏は次のように述べている。
インフレ圧力によって企業の費用が上がること、消費が落ち込むことを考えれば、S&P 500の1株当たり利益が10%下落することは簡単に考えられる。
そうなれば利益は220ドルから200ドルになる。これでも緩やかな下落だ。
筆者の推計では実際にはもっと下がるだろう。だがマイナード氏はあくまで甘く見積もり、最良のケースで株価がどうなるかを考えている。
1株当たり利益が出たならば、あとは株価収益率である。マイナード氏は次のように続ける。
そして景気後退時における平均的な株価収益率を考えよう。例えば15倍だ。そうなれば、S&P 500は3,000ドルになる。もっと甘く考えて16倍にしてもいいが、それでも現在の水準から遠く離れている。
株価収益率が16倍でも3,300ドルになるが、現在のS&P 500の水準は3,878ドルである。
3,000ドル、3,300ドルという水準を現在のS&P 500のチャートで見てみよう。
結論
マイナード氏は次のように纏めている。
現在の季節的な上げ相場と、6週間前のFOMC会合から続いている安心感による上昇相場が終われば、株式市場はダウントレンドに戻るだろう。株価はまだ底値に達していない。
筆者の計算でも株価はまだ下がることになる。だが難しいのは株価収益率の計算である。株価収益率は長期金利とインフレ率、投資家のリスク選好度に影響される。
一方で政策金利の予想や、金利に直接影響されるドル円レートの予想は、株価の予想よりも理論的に決まる。
現状では筆者は2年物米国債の金利低下とドル円の空売りに賭ける方を好んでいるが、それぞれの戦略がどう出るだろうか。2023年を楽しみにしたい。