DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が発表されたばかりのインフレ率とFOMC会合結果を受け、CNBCのインタビューで今後の金融政策について語っている。
急減速するアメリカのインフレ率
今週はアメリカのCPI(消費者物価指数)の発表と金融政策を決めるFOMC会合の結果発表が立て続けにあった。
より重要なのはCPIの方だが、アメリカのインフレ率は2ヶ月連続で急落し7.1%となった。
この状況を予測していたのが、前からFed(連邦準備制度)の利上げはやり過ぎだと主張していたガンドラック氏だった。
そのガンドラック氏は今後のインフレと金利をどう予想しているか。彼は次のように述べている。
今後半年の利上げはCPIの数字に大きく左右されるだろう。そしてインフレ率は下がる。2022年の半ばからから既に2%下がっている。6月に発表される5月のインフレ率は、ピークだった前年の9.1%から4.1%まで下落しているだろう。
上のグラフの通り、9.1%から既に7.1%まで落ちているインフレ率は、ガンドラック氏によれば半年で4.1%まで落ちるという。
今後のインフレ率の推移予想
ガンドラック氏がそう考える根拠は何か。彼は次のように説明する。
理由はコモディティ価格の推移と、比較対象となる前年の数字だ。
インフレ率は通常前年同月比の数字で発表され、前年同月比とは前年の同じ年の数字からの上昇率を見るということである。
だから前年同月の数字が高ければ、上昇率は低くなる。そして最近の原油価格のチャートは次のようになっている。
2023年前半の数字は2022年前半の数字と比べられるので、まさに前年の数字が急上昇する局面がこれから待っている。それは6月頃まで続くことになる。ガンドラック氏が「6月に4.1%」と言った理由はそれである。
また、ガンドラック氏の指摘とは別に、筆者は1970年代の物価高騰時代にインフレ率が上昇時と同じ速度で下落したという事実を添えておきたい。当時のインフレ率のチャートは以下の通りである。
結論
ということで、ガンドラック氏は引き続きインフレ率の下落を予想している。2ヶ月連続のインフレ率急落を受け、筆者も彼が正しかったと認めざるを得ない。
一方でFedのパウエル議長は「まだインフレが抑制されたという証拠はない」という姿勢を表向きは崩していない。
だが筆者は今後の政策金利はインフレ率次第だろうと考えているし、ガンドラック氏もそう考えている。彼は次のように纏めている。
インフレ率の9.1%から4.1%への下落をパウエル議長が「インフレ率が2%に落ち着くという説得力ある証拠」と呼ぶかどうかは分からないが、大きな改善であることは間違いなく、それはFedの考え方に影響を与えるだろう。
そして別の場面ではこう言っている。
政策金利が5%以上に上がるとは思えない。
インフレ率が4%まで急降下を続け、しかもそれがその勢いのまま止まる気配を見せなければ、パウエル氏も焦り始めるだろう。ガンドラック氏の言うデフレ直行シナリオである。
緩和政策による急上昇の後に引き締め政策による急降下を始めたインフレ率は、恐らく緩和がなければそのままマイナスまで急降下してゆくだろう。
その時中央銀行はどうするのか。そのまま経済はデフレと不況に突っ込んでゆくのか。あるいは緩和を再開してインフレ第2波へと突っ込んでゆくのか。
どちらにしても経済は滅茶苦茶である。
だがそれを考えるのはまだ早い。そして今後半年はインフレ減速とドル安がトレンドだろう。投資家はポートフォリオがそれに対応しているか確認した方が良い。