米国時間11月29日、9月分のケース・シラー住宅価格指数が発表され、アメリカの住宅価格がピークを超えて引き続き下落していることが分かった。年間の上昇率(前年同月比)は10.7%であり、前月の12.9%から上げ幅を縮小している。
ピークを超えた住宅バブル
今の状況は住宅価格指数のチャート(上昇率ではなく数字そのもの)を見てもらうのが一番分かりやすいだろう。
コロナ後の現金給付によるインフレが話題になっているが、市場経済に大量に注ぎ込まれた現金が押し上げたのは株価や原油価格だけではない。
その筆頭が住宅価格である。コロナ後に数十パーセントも上昇した住宅価格は、ようやくピークを超えたようだ。
住宅価格下落の原因
アメリカの30年物の住宅ローン金利は6.6%まで上昇している。チャートで見ると次のようになる。
元々はFed(連邦準備制度)がコロナバブル後も緩和を続けていたため、住宅価格が年間20%ほども上昇しているような状態で金利が3%台だった。そのため、そのような状況が続けばアメリカ国民にとってはお金がなくともローンを借りて住宅を買うほかなかった。
そうした状況では誰もが住宅を買うので、仮に賃貸で住み続ければ住宅価格と賃料が上昇し続けることになる。一方でローンで住宅を買えばインフレを免れるだけでなく儲けることができる。住宅バブルが起きない理由がない。
しかしFedのパウエル議長はようやく誤りを認め利上げを行なった。行うべき利上げは既にかなりの部分行われている。
それで住宅ローン金利は急速に高騰し、今や住宅価格の上昇率は10.7%、ローン金利が6.6%なので、差は縮まってきた。このような状況ではローンで家を買ってもあまり儲からない。住宅価格が下がってきたのも当然だろう。
結論
ケース・シラー住宅価格指数は発表までややラグがあるのでこれは9月のデータだが、10月のCPI(消費者物価指数)では住宅価格が減速していて市場関係者を驚かせた。
エネルギー価格、住宅価格が減速しているとなれば、あとは賃金インフレしか残されていない。Fedの金融引き締めによって確かに物価が抑制されている様子がこのデータでも確認されたと言えるだろう。
一方で、住宅価格はやはり金利に大きく影響される。そしてインフレがそれほど急には下落しないと考えるならば、来年は金利もまた高止まりするだろう。
そうなれば住宅市場には今の厳しい環境が続くことになる。住宅価格は何処まで下がるだろうか。そしてそれは、アメリカの実体経済が来年どうなるかを物語っているのである。