ジョージ・ソロス氏、製薬会社とグロース株の買いで金利低下を予想か

さて、引き続き機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fである。今回はジョージ・ソロス氏が保有しドーン・フィッツパトリック氏が実際の運用を任されているSoros Fund Managementのポートフォリオを紹介したい。

ソロス氏の今年のトレード

今年のソロス氏のトレードのおさらいだが、まず筆者や著名投資家の例に漏れず、今年の株価急落を事前に予想し空売りに成功した。金利上昇に弱いハイテク株で構成されるNasdaqを特に空売りしたことは、流石の慧眼と言うべきだろう。

しかし一旦ハイテク株が暴落すると、前回の6月末のポジション開示ではAmazon.comを大量買いした。

このポジションは購入直後は上昇したが、その後決算悪化などを受けてAmazon.comの株価は振るっていないことは周知の通りである。株価チャートは以下のように推移している。

ソロス氏は今回の開示でもAmazon.comの保有株数を変えていない。

ちなみにAmazon.comはソロス氏の弟子であるスタンレー・ドラッケンミラー氏も今回の開示で買っていた銘柄である。今のところはだが、師弟揃って振るっていないトレードとなっている。

製薬会社の買い

さて、ソロス氏のポートフォリオの中で次に紹介するのは製薬会社のBiohavenである。保有額は3.4億ドルで、2番目に大きいポジションとなっている。

BiohavenはPfizerに買収されたのだが、買収後も新会社となって株式市場への上場を維持している。新会社の株価は次のように推移している。

Pfizerによる買収は上場後の10月3日に完了しているが、その後も株価は急騰している。ソロス氏のポジション開示は9月末のものなので彼がその後も保有しているかは定かではないが、成功したトレードと言って良いだろう。

ソロス氏の最大ポジション

最後は、ソロス氏が上場前から保有し、長らく最大ポジションとなっている新興電気自動車のRivian Automotiveである。

Rivianは金利高騰によるグロース株総崩れの流れを受けて今年は大幅安となっているが、春までの下落後は横ばいを続けている。今後、金利が天井を打つことがあれば株高に転じることもあるかもしれないが、何とも言えない。

ソロス氏は今回Rivianのポジションを8%減らしている。

結論

また、これに加えてソロス氏はNasdaqのETFの上昇に賭けるコールオプションの買いを増やして1.5億ドルとし、S&P 500のETFのコールオプションの買いを減らして1.4億ドルとしている。これからの相場でNasdaqの方に分があるとソロス氏が考えているのは明らかである。(※11/21誤植を修正しました)

ソロス氏とドラッケンミラー氏の両方がAmazon.comに賭けているのは興味深い。筆者の意見はと言うと、ハイテク株の決算が悪化し始めた4月の記事の頃から実はそれほど変わっていない。

決算悪化はまだ終わっていないという立ち位置である。Amazon.comは将来ある良い企業だというのはソロス氏やドラッケンミラー氏に同意するのだが、買うとすれば景気後退が起こる来年だろう。

こういう相場では安いからといって飛びつくと更に下落して当惑することになる。少なくとも今のところはそうなっている。両者とも金利のピークアウトを予想しているのだろうとは思うが、それならば買うべきはやはりゴールドではないか。ゴールドの決算は決して悪化しない。決算がないからである。

製薬会社は、買収にまつわるトレードはソロス氏の得意分野であり、製薬会社自体に賭けたのかどうかは定かではないが、こちらもドラッケンミラー氏と被っているのは興味深い。グロース株にディフェンシブ銘柄、つまりは景気後退からの金利低下への賭けである。

一方で両者とも米国株買いポジションの総額は低い水準のままほとんど変わっていない。Form 13Fでは空売りは開示されないが、恐らくは指数空売りとの組み合わせになっていると思われる。

いずれにせよ、株式市場は今後は純利益の水準がどうなるかが非常に重要になる。筆者の立場は、以下の記事で書いた通りである。