さて、機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fの季節がやってきた。まずはジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを率いたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のポートフォリオから見てゆこう。
ドラッケンミラー氏の今年のトレード
ドラッケンミラー氏の今年のトレードはと言えば、まず今年前半に金利上昇と株価の急落を予想し、大きな利益を上げたことが報道された。
しかしその後Form 13Fで確認できるドラッケンミラー氏のトレードはあまり振るっていない。ハイテク株は高金利に弱いにもかかわらず持ち続けていたAmazon.comを6月末に売っているが、Amazon.comは7月から上がっていた。
そして今回は9月末のポジション開示だが、何とドラッケンミラー氏はAmazon.comを1億ドル買っており、再びの参入ということになる。
そしてその後Amazon.comがどうなったかと言えば、残念ながら芳しくない。
6月末までに売った後は上がっており、そこから9月末までに買い直したわけだが、悪い決算を受けてそこから下がったのは多くの投資家の知るところである。
コロナ直後にハイテク株を買ったドラッケンミラー氏らしくない歯切れの悪いトレードである。ちなみに1億ドルのこのポジションは3番目に大きいポジションとなっており、ダメージは少なくないことが推測される。
Freeport-McMoRan
さて、次のポジションは銅の鉱山会社であるFreeport-McMoRanである。このポジションは前回の縮小されていたが、今回も6割ほど売却して3,197万ドルのポジションとなっている。
チャートは以下の通りである。
こちらは9月末以後上昇している。インフレ急減速でコモディティ価格は上昇した。
Eli Lilly
だがそもそも10月11月は株式市場全体が反発しているので、減らしたポジションが上がったと言うだけでなく、増やしたポジションにも言及すべきだろう。
そこで今回株数を6割増やして2番目に大きなポジションに躍り出た製薬会社のEli Lillyはどうなっているか。ポジションの金額は1.6億ドルである。
好調である。製薬会社を買ったということは、ディフェンシブ銘柄を買うべき状況が来るとドラッケンミラー氏は予想しているのだろうか。インフレになっても否応なく買わなければならないものの筆頭が薬であり、その意味では理にかなった銘柄選択である。
Coupang
最後に長らくドラッケンミラー氏の最大ポジションとなっている韓国のAmazon.comことCoupangである。株数は変わらず、金額は3.2臆ドルとなっている。
やはりグロース株は好調とは言えない。Amazon.comも含め、高金利の影響による決算の悪化に気をつけるようここでは先に警告しておいた。
結論
ということで、空売り成功後、ドラッケンミラー氏のトレードは歯切れの悪いものが続いている。
一方でポジションから読み取れることはある。高金利に弱いハイテク株であるAmazon.comと、ディフェンシブ銘柄であるEli Lillyを買ったということは、やはり景気後退により金利がピークアウトすることを予想しているのではないか。
そうなれば、やはり思い出されるのがドラッケンミラー氏のドル売り宣言である。このポジションであれば既にドルの空売りを始めていてもおかしくないのだが、どうだろうか。