11月FOMC会合結果を受けて見事に株価が急落した理由

アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は米国時間11月1日から2日まで金融政策決定会合であるFOMC会合を行ない、事前の予想通り0.75%の利上げを決定した。

利上げ停止を見据えた声明文

正直、内容については事前に書いておいたほぼそのままの結果だったので、ここの読者に驚きはないとは思うが、一応いつものようにまず会合後に発表された声明文から見てゆこう。

今回、声明文には纏まった文章が足されている。追加された部分を一挙に引用しよう。

インフレを長期的に2%へと戻すために十分に抑制的な金融政策のスタンスを維持するためには現在の利上げは適切であると予想している。

将来の利上げのペースを決定するにあたっては、これまでの金融引き締め政策の累積、そしてそれらの金融政策が経済活動やインフレに影響するにあたっての時間差、そして経済と金融市場の状況を考慮に入れることになる。

恐らくは重要なのは「時間差」という言葉だろう。引き締めを行なってからそれが実体経済に効果を表すまでの時間差を考慮するというのは、利上げを行なってからそれが効果を発揮するまで待つという意味であり、政策金利を十分に上げた後は一時停止するという以前からの観測を実際に文章にしたものと思われる。

利上げ停止ではなく利上げ減速

利上げの終わりが見えてきたという意味ではハト派の声明文であり、実際に金融市場は一時的には喜んだようだ。

だが結局は今回のFOMC会合は筆者が事前に予想したような展開となった。記者会見ではパウエル議長は「時間差」について次のように言っている。

利上げ停止について考えるのは非常に時期尚早だ。時間差と言えばすぐに利上げ停止の話になってしまう。わたしの意見では利上げ停止について話すのはまだまだ時期尚早だ。利上げはまだまだ続く。

実際には、パウエル氏は利上げ停止よりも先ず利上げ減速をシグナルしたかったようだ。当然、いきなり利上げが止まるわけではないので、まずは減速からである。

だから実際、ここでは事前に書いていたように12月の利上げが0.5%になる可能性についてはパウエル氏は言及した。

過去2回の会合で、いずれ利上げのペースを緩めることが適切になるだろうと言った。

その時は近づいている。早ければ次回かもしれないし、その次の会合かもしれない。まだ決まっていない。だがそれについて次の会合で議論はされるだろう。

利上げは今回の会合を含め、ここのところ0.75%の幅で行われている。来月が0.5%になるならば久々の減速というわけである。

それで株式市場は喜んだだろうか? S&P 500のチャートは以下のようになっている。

米国株はパウエル議長の記者会見を受けて急落した。何故かと言えば、パウエル氏が12月の利上げ幅よりも重要なことを喋ったからである。

彼は次のように言っている。

前回の会合以降に明らかになったデータによれば、利上げ後の最終的な金利水準はこれまで予想していたものよりも高いものになりそうだ。

利上げのスピードは、金利がどれだけ長期間抑制的な水準にあり続けるかという問題に比べると些細な問題だ。

珍しいことに筆者もパウエル氏とまったく同意見である。

結論

ここでは会合前に次のように言っておいたではないか。

2023年は年間通して政策金利が4%以上の年となる。だが株式市場は12月の利上げ幅の0.25%の差に湧いている。馬鹿ではないのだろうか。

長期的には長期トレンドに従うが、反発時には極めて近視眼的になるのが下落相場の特徴である。すがるものが他にないからである。

株式市場は何を期待していたのか。それさえも不明である。下落相場における一時的な株高など所詮そういうものである。

だが株式市場は結局、次々に発表されてゆく決算という12月の利上げ幅よりも重要なデータに目線を移らせてゆかざるを得ないだろう。

ハイテク企業などから酷い決算が出始めており、金利が長期間4%以上に維持されるような世界においては、そういう決算が山のように出てくることになる。まだまだ序の口である。