米国時間で11月2日、アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)はFOMC会合の結果を発表する。それに先立って株式市場では株価が反発しているが、この反発は会合後も続くのだろうか。
利上げのメインシナリオ
まずそもそも、11月の会合では何が織り込まれているのかと言えば、まず0.75%の利上げである。金利先物市場が織り込む今回会合での利上げ確率は次のようになっている。
- 0.75%利上げ: 84.5%
- 0.50%利上げ: 15.5%
一方で、その次の12月の会合での利上げ幅が0.75%になるか0.5%になるかについては五分五分という織り込みになっている。
今回の利上げについては0.75%になるだろうが、問題は12月である。ジェフリー・ガンドラック氏などが指摘するように、パウエル議長は基本的に市場の織り込みに淡々と従って利上げを進めてきた。
だが今回は市場の意見が割れており、11月の会合ではパウエル氏は12月の会合での利上げ方針について少なくとも何か言わなければならない立場に置かれる。
0.75%を示唆すれば市場予想よりタカ派、0.5%を示唆すれば市場予想よりハト派ということになり、いつもの「市場に従って何もしない」戦略が使えない状況である。
今後の利上げ動向
それが今回の会合のまず1つの論点である。では来年以降の利上げはどうなるだろうか? 今後の利上げ動向を織り込んで推移する2年物国債の金利は次のようになっている。
4.4%である。数ヶ月前まで3.5%近辺だったのだからなかなか上がったと言えるのだが、それでもインフレ率はまだ8%台である。
ちなみに政策金利は11月の会合で0.75%利上げされればようやく3.75%まで上がる。12月が0.5%だったとしても年末には4.25%である。
金利先物市場によれば政策金利は2023年末までに5.25%まで上昇するという織り込みになっており、パウエル氏がそれを肯定するのか、あるいはより早い利上げ停止を示唆するのかという点も、投資家が注目するところである。
株式市場の反応
ところで、株式市場では11月2日の結果発表を控えて株価がやや反発している。
他に大きなイベントもないのでこのFOMC会合で利上げ減速が示唆されることを期待してのものと見るべきだが、面白いのは債券市場が株式市場ほど楽観してはいないということである。長期金利のチャートは次のようになっている。
金利は最高値から若干下がってはいるが株式市場ほどの楽観ではない。
株価上昇の理由
本来、利上げ鈍化を期待して株価が上がるのであれば、債券市場で金利が下がってその分株価が上がるのが自然だ。だが現在は債券市場がまだ利上げ鈍化を織り込んでいないにもかかわらず、株式市場は先にそれを期待しているのである。
だから、この株価反発が続くためには、今回の会合でその期待が現実のものとなり、債券市場もそれに同意をしてそれを織り込むのでなければならない。
だがパウエル氏がどのような発言をすれば株式市場の期待は満たされるだろうか。「政策金利が5%に行く前に利上げを止める」とは言いそうにない。精々「政策金利が4%台に差し掛かれば利上げペースを抑える」程度だろうが、しかしそれはそもそも織り込み済みである。
来年以降の利上げ動向については大したハト派発言を引き出せそうにないから、株式市場が喜びそうなシナリオとしては12月の0.5%利上げだろうか。だが結局、来年政策金利がどの水準にあるかという話には大して影響を与える話でもなく、株価がそれで短期的に反応するとしても、しばらく経てば市場の注目はより中長期的な金利水準へと移ってゆくだろう。
結論
株式市場と債券市場が同じものについて違う反応を示すことはよくある。そしてその場合、大抵は債券市場の方が正しい。
そして何より、株式市場が一番気にしなければならないのは利上げプロセスの枝葉末節ではなく、ついに始まった決算シーズンである。Amazon.comなどが悲惨な決算を発表して市場を騒がせているが、金利動向は小規模な修正以外に変わりようがないので、これからの株価動向は企業利益が決めてゆくことになるだろう。