ジム・ロジャーズ氏: インフレ対策でコモディティは買い、銀と銅と砂糖が安い

ジョージ・ソロス氏とともにクォンタム・ファンドを立ち上げたことで有名な投資家のジム・ロジャーズ氏がThe Meb Faber Showのインタビューで、インフレ対策としての金属や農作物などのコモディティの買いと、ロジャーズ氏が薦める具体的な銘柄について語っている。

まだ割安な資産クラス

投資ブームというのは今も続いているのだろうか。それとも金融庁に米国株バブルのド天井を掴まされた素人たちはもう居なくなったのだろうか。

いずれにしても、ロジャーズ氏はこれから投資すべき資産クラスについて次のように述べている。

わたしが毎日やっているように、すべての資産クラスを眺めてみよう。債券はまだまだバブルだ。これまで債券がこれほど高値になったことはない。

不動産も多くの国でバブルだ。ニュージーランドや韓国、そしてアメリカの多くの場所で不動産価格は歴史的に見て高い水準にある。

多くの株式は狂気的な水準に行ってしまった。Samsungは毎日上昇していた。Appleも毎日上昇していた。一部の株式は明らかにバブルだ。

わたしの知る中でバブルではない唯一の資産はコモディティだ。

超長期チャートで金属や農作物のチャートを見たことがある人ならば、ロジャーズ氏の言葉に同意するだろう。

長期的水準を考えれば、コモディティはバブルになっていない。しかも世界中がインフレになる中で、コモディティがバブルになっていないということが注目に値する。前回アメリカが物価高騰になった1970年代にはあらゆるコモディティ銘柄がバブルになったのである。

シルバー

だが今はどうか? ロジャーズ氏はこう語る。

銀は市場最高値より60%も低い。砂糖も同じだ。こうした価格はバブルの水準ではない。

銀価格の長期チャートを見てみると次のようになっている。

世界的なインフレになっているのに銀価格がこの水準というのは驚異的だ。

砂糖はどうか? 砂糖はチャートで見ると銀価格よりももう少し上がっている。

だが銀も砂糖もリーマンショック後の量的緩和で上がった水準ほどにも上がっていない。だがリーマンショック後にインフレにはならなかったが、今は世界的なインフレになっている。コモディティのこの水準はおかしいと言える。

コモディティはまだまだ安い。ロジャーズ氏は次のように言う。

今世界中で起こっていることは多くのコモディティにとって追い風だ。

それは世界的なインフレということだけではない。ロジャーズ氏はこう続ける。

電気自動車が増えるなら、電気自動車はガソリン車の4倍か5倍の量の銅を使う。しかし誰も銅鉱山を増やしたりしていない。

銅は銅線に使われるため電気製品には必須であり、いわゆるSDGs銘柄である。銅価格は次のように推移している。

また、コモディティは需要と供給で決まるため、銅を採掘できる鉱山が増えているかどうかも重要である。ロジャーズ氏は両面で見て有利だと言う。

ただ、銅に関しては中国が世界の輸入の半分近くを占めており、中国バブル崩壊の影響を受けるので筆者はお勧めしない。この点については以下の記事で既に説明してある。

小麦

ついでにロジャーズ氏は触れていないが他のコモディティ銘柄のチャートも見ておこう。

例えば小麦はロシアとウクライナがともに主要輸出国のためロシアのウクライナ侵攻後に高騰した。

筆者は当時インフレ対策で様々なコモディティを買っていて、その1つが小麦だった。良いタイミングで利益確定できたものである。

しかし小麦も今では価格は大分戻っている。

当時筆者が保有していた他の銘柄は、例えばとうもろこしである。

とうもろこしはそれほど安くはなっていない。とうもろこしはバイオエタノールの原料として使われるほか、畜産の飼料にもなるためだろうか。

ゴールド

そして最後に最近筆者が買い戻した金価格のチャートを載せておこう。

ゴールドは最近史上最高値を更新したが、それでも今の価格はリーマンショック後の水準と変わらない。

しかしゴールドは1970年代の物価高騰時代には20倍に上がった銘柄なのである。

結論

筆者のゴールドの取引については詳しくは以下の記事を参照してもらいたい。

今はコモディティはゴールドしか持っていないが、シルバーの長期チャートを見ると正直惹かれてしまう。もう一度掲載しよう。

長期的に言えば、安いコモディティは何を持っていても悪くないだろうし、少なくともインフレの状況下で株式を長期保有するよりは賢明な選択肢のはずだ。

今後10年のシナリオは2つ想定される。1つは来年から景気後退が深刻になり、中央銀行が緩和に逆戻りしてインフレ第2波に繋がってゆくシナリオである。

もう1つは、クォンタム・ファンドでのロジャーズ氏の後輩にあたるスタンレー・ドラッケンミラー氏がリスクシナリオとして挙げていた、株価が80%下落してインフレは二度と戻ってこないシナリオである。

筆者は今のところ前者のシナリオになると想定しており、それが正しければコモディティ銘柄はどれも1970年代のような暴騰になるだろう。人々はまだインフレを舐めている。だがいずれ人々が長期的なインフレが不可避であることに気付く日が来る。

ただ、現状ではコモディティ価格はアメリカの金融引き締めによって頭を抑えられている。金利が上がる状況下では、金利が付かないコモディティは分が悪いからである。

だからここから半年ほどの値動きについては利上げの動向が重要になる。これまで書いてきている通りである。

そしてもう1つ考えるべきは暗号通貨かもしれない。しかしそちらのタイミングは更に難しいだろう。