ガンドラック氏: アメリカが景気後退で緩和再開すればビットコインは買い

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューでアメリカの緩和再開と暗号通貨相場について語っている。

金融引き締めと暗号通貨

多くのヘッジファンドマネージャーは今年の株価の見通しに弱気だった。実際、筆者やここで紹介してきた多くの著名投資家たちは株の空売りで利益を上げている。

だが特にここ最近、米国株の下落を予想する声が更に強まってきた。いくら緩和してもインフレにならないことだけが頼りだったのに、インフレになってしまったアメリカ経済がもうどうにもならないことがはっきりしてきたからである。

ガンドラック氏と同じ債券投資家であるスコット・マイナード氏も、2週間ほど前に下落予想をしていた。

その後米国株は下がり続けており、20%下落の予想だったが既にその半分ほどは達成されてしまっている。

インタビューではガンドラック氏はこのマイナード氏の意見に同意し、株価下落の要因として次のものを付け加えている。

量的引き締めは今開始されたところだということを忘れてはならない。景気への逆風は短期金利の上昇だけではない。量的引き締めが強化されている。

リーマンショック後長らく株価を支えてきた量的緩和を逆回しにした量的引き締めが今月から遂に最大出力となっている。

だが誰も気にしていない。誰もまともに株価の変化要因を見ていない。量的緩和の時は喜んで株を買ったのに、量的引き締めで株を売らない人間は何を考えているのだろう。

ビットコイン相場の動向

さて、本題のビットコインである。ビットコインも緩和によって暴騰してきた資産クラスである。ガンドラック氏は次のように説明している。

ビットコインは紙幣ばら撒きによって6万ドルまで上がった。今やばら撒きが無くなったので、ビットコインは行き場を失った。

まだそれほど落ちていないが、株価がこれから20%下落するならば下落幅は拡大する可能性がある。

ビットコインのチャートを見てみよう。

6万ドルから2万ドル以下まで落ちている資産を「それほど落ちていない」と表現するのは異論があるかもしれないが、2年前の水準に戻っただけだと考えれば「それほど落ちていない」のかもしれない。

だがビットコインは株式と同じく緩和に支えられて上昇してきた資産クラスである。このまま株価が下落するのであれば下落を免れないだろう。

ビットコインが反転するとき

ビットコインはこのまま下げ続けるのか? ガンドラック氏はそうは考えていないようだ。

緩和が再開した時には暗号通貨を買うのも良いだろう。

パウエル議長がこのまま引き締めを続け、アメリカ経済が景気後退に陥る場合、紙幣のばら撒きが帰ってくる。

ガンドラック氏は、現在のFed(連邦準備制度)の金融引き締めが行き過ぎであり、このままでは経済をオーバーキルしてしまうと考えている立場である。

一方で経済学者のラリー・サマーズ氏などはインフレは根強く、利上げの手を緩めてはならないと主張している。

恐らくは両方が正しいのだろう。ガンドラック氏の言う通りアメリカ経済の状態はこれから壊滅的になり、しかもサマーズ氏の言うようにインフレ率はそれほど下がらない。

筆者が年始から言い続けているスタグフレーションシナリオである。

筆者の予想では、恐らくインフレが今後天井からは下落したもののそれほど下がりきっていない状態で、景気後退が深刻な状況となり、Fedは方向転換を強いられるだろう。

ガンドラック氏によれば、その時はビットコインは買いである。彼は次のように続けている。

だから今は自分はビットコインの買い手ではないが、政府がもう一度現金給付を行えば条件反射でリスク資産を買えばいい。それにはビットコインも含まれる。

緩和でバブルになり、引き締めで暴落しているビットコインは、緩和再開なら買いだというわけである。だがガンドラック氏は条件を付け加える。

それにはFedの本気の方針転換が必要だ。方針転換の希望的観測では駄目だ。

恐らくそれはインフレがピークに達して利上げを緩める瞬間ではなく、景気後退が酷くなり緩和を余儀なくされる瞬間のことだとガンドラック氏は言いたいのではないか。

しかし方向転換のタイミングについてはガンドラック氏も迷っているようだ。

市場は未だに来年の第2四半期にFedが方向転換すると予想している。それはもしかすると正しいかもしれないが。Fedが事前の織り込みよりも過度な引き締めをやればそうなるかもしれない。

結論

いずれにせよそのタイミングを考えるのはまだまだ早いだろう。ガンドラック氏も「それまでに乗り越えるべきイベントがいくつもある」と言っている。

まだ景気後退も本格化していない。それは恐らく来年だろう。だがその後のことを漠然と考えておく時期がそろそろ来ているようだ。

インフレ率が下げ切る前に緩和再開になれば、それはもうインフレは止まらないということだ。相場は今のような単なるインフレではなく、ハイパーインフレーションを織り込むことになる。

その時に買うべきものは色々考えられる。ジョン・ポールソン氏はゴールドを薦めている。

ガンドラック氏によれば、ビットコインもそこに含まれるようである。

他にも色々選択肢はあるだろう。読者は何を買うだろうか。