ジム・ロジャーズ氏: 他人の投資アドバイスに従って投資してはならない

日本時間で今日の夜には注目のアメリカのCPI(消費者物価)、つまりインフレ率が発表されるが、その前に箸休めとしてジム・ロジャーズ氏のManget Minutesによるインタビューから、個人投資家へのアドバイスの部分を紹介しよう。

他人の投資アドバイス

コロナ後に株価が大きく上がったために、多くの人が投資に興味を持っている。金融庁やYoutubeのインフルエンサーの言うことを鵜呑みにし、それを「投資の勉強」だと思っている。

彼らが何故、資産運用を仕事にしたことさえない金融庁職員やYoutuberの言うことを盲信し、それと真逆のことを言っている世界的なファンドマネージャーの言うことを無視するのかは定かではないが、彼らは常に間違っている方の意見を好む。

だがそもそも、ロジャーズ氏はそれが誰の言うことかなど問題ではないと言う。彼は次のように述べている。

他人の投資アドバイスとやらから離れることだ。他人の投資アドバイスに耳を貸してはならない。

だが今市場に参入している多くの個人投資家が聞きたいのはそういうことではないだろう。彼が聞きたいのは、持ったまま寝ていれば儲かるのはS&P 500なのか全世界株式のETFなのかということである。

ロジャーズ氏は次のように続ける。

わたしはこれを多くの人に対して言う。他人のアドバイスなど無視することだと。そして彼らはこう答える。「OK、分かりました。それで何に投資すれば良いですか?」

筆者は笑ってしまった。筆者も特に今年、こういう人に多く出会ったからである。ここでは年始から繰り返しているように、インフレによる金融引き締め相場では株式だけではなくあらゆるものが下落すると予想しており、出会った人に意見を聞かれればそのように答えた。

インフレと金利、金利と株価の関係など出来るだけ丁寧に答えたつもりである。だから聞いた人は深く感謝して次のように言う。

よく分かりました。本当に有難うございます。それで何を買ったら良いですか?

彼らはもう駄目だと思うのは筆者だけではないはずだ。

他人の意見を鵜呑みにしないこと

ロジャーズ氏は自分で考えることの大切さを強調する。

わたしの第一のアドバイスは、他人の投資アドバイスに耳を貸さないことだ。それが誰のアドバイスであっても同じことだ。

投資で成功したければ、自分が理解しているものにだけ投資をすべきだ。

「でも自分は何も知らない」と人々は言うかもしれない。だが実際にはそんなことはない。ロジャーズ氏は次のように続けている。

これを聞いている多くの人は、何かについて沢山知っているはずだ。車でもファッションでもスポーツでも何でもいい。そこから始めることだ。

何故ならば、あなたはそれについて既に沢山知っているからだ。間違いなくわたしよりも多くを知っているだろう。それはあなたの好きなものなのだから。

病院に行けばどんな雑誌を手にとって読むだろうか? 普段どんなウェブサイトを見ているだろうか? それがあなたがわたしよりも多くのことを知っているものだ。

だからそこに留まり、あなたの好きなその領域、あなたがよく知っているその領域でなにか変化が起こり、よく知っている何かが成功しそうな時、それについてよく調べ、投資対象になる会社を見つけ、経営陣は賢いか、負債は多すぎないか、多くのことを考えられるはずだ。

インデックスを買って寝ていれば儲かるという馬鹿げた考えが流行ってしまったから皆忘れているかもしれないが、投資とはそういうものではなかったか。

投資家が利益を上げられる理由

投資家は何故利益を上げられるのか。そこにどんな社会的意義があるのか。

将来成功する会社に資金を融通し、成功しない会社には資金を融通しないことで、成功する見込みのある事業だけが社会のリソースを使えるようにすることではないのか。

相場に正しい未来予測を提供するからこそ、投資家は利益を得られたはずである。

「しかしそんなことは自分には出来ない」と人は言うかもしれない。だがそうだろうか? 例えばAppleが成功するかどうかは、投資家でなくともAppleのファンであれば分かったはずである。

ロジャーズ氏は次のように言う。

あなたはそのことについて他人よりも多くのことを知っているのだから、それが成功すると確信したらそこに投資をすべきなのだ。それが投資で成功する方法だ。

だが最近投資にはまっている人々が求めているのはそういうものではない。ロジャーズ氏は続ける。

だか人々は言う。「でもそんなことはつまらない」。

彼らの知りたいのは寝てても儲かる方法だからである。

ロジャーズ氏は次のように答える。

OK、もしお金を儲けたければ、投資で成功したければ、つまらないことをやるべきだ。あなたの知っている領域に留まり、つまらないことをやるべきなのだ。

だがそれをやりたくない人々が、多くのプロが専門知識を使って利益を出すために必死に仕事をしている株式市場にやってきて、寝てても利益を出したい人々が、今の投資家なのである。

だが、それが株式市場であれ何処であれ、仕事をせずに利益を出せる分野は存在しない。自分の投資に根拠があるかどうかをろくに考えず株式市場に資金を投げ込む行為はただのギャンブルである。

そして「米国株はこれまで上がってきたからこれからも上がる」という理由になっていない理由以外に投資の根拠を本気で見つけようと思えば、それはもはや真面目な研究、真面目な投資となる。

ロジャーズ氏は人々に、そもそも投資とは何であったかを思い出させようとしている。だが彼の次の言葉は彼らには響かないだろう。

何か好きなものがあるはずだ。そこにあなたの情熱があはずだ。それを突き詰めればいい。そうすれば投資で成功できる。