アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)がインフレ抑制のため金融引き締めを行うなか、株式市場が荒れている。そしてBloombergによるインタビューによれば、ミネアポリス連銀総裁のカシュカリ氏はそれを喜んでいる。
株式市場の楽観と悲観
カシュカリ氏は次のように始めている。
最後のFOMC会合以来、株式市場が上昇したのを見て、わたしはまったく嬉しくなかった。中央銀行のメンバーは皆インフレ抑制に本気だというのに、株式市場はそれを誤解したようだったからだ。
株式市場の上昇が嬉しくないという表現は、中央銀行のメンバーからなかなか聞かない表現ではないか。7月のFOMC会合以来、株式市場は一時的な反発相場を演じてきた。
7月のインフレ率がやや減速していたこともあり、市場は利上げが弱まるのではないかと考えたのである。
だがその後、ジャクソンホール会議でパウエル議長が経済を犠牲にしてでもインフレを抑制すると述べ、その後株価は再び下落している。
筆者はこの直前から米国株の空売りを再開している。
株価下落を喜ぶカシュカリ氏
そしてカシュカリ氏がこの株式市場の下落再開をどう見ているかといえば、次のように見ている。
だからジャクソンホールにおけるパウエル氏の講演に対する市場の反応を見て喜んでいる。彼らはようやくインフレを目標の2%に戻すというわれわれの決意がどれだけ本気かということを理解した。
中央銀行のメンバーが株価の下落を見て喜んでいるというのはなかなか衝撃的な事実ではないか。
何故そうなるのか? これについては以前の記事の記述を思い出したい。
量的緩和の本質が資産価格を上昇させてデフレと戦うことであったならば、インフレと戦うためには資産価格の低下が必須条件だということになる。
そして恐ろしいことに、連銀総裁であるカシュカリ氏もその意見に賛成のようである。
高金利は長く続く
そしてインフレが少しでも減速すればすぐに利下げを行ってくれるという株式市場の甘い期待もカシュカリ氏には通用しないようだ。彼は次のように述べている。
われわれにとって一番高くつく失敗は、「経済が減速の兆候を示している、インフレは収まった、利下げをしよう」と思って失敗することだ。だから利上げの影響のタイムラグを考え、利上げ後にインフレが本当の意味で収まるまでそこで待ち続けることだ。
1970年代の物価高騰では、インフレが抑制されると同時に経済が停滞すると、すぐに緩和に逆戻りし、それがインフレ第2波へと繋がっていた。
だがカシュカリ氏はその可能性も消し去りたいらしい。そうなれば、利上げプロセスが終了した後も本当に長い間高金利が続くことになる。
結論
そうなれば、これまで低金利で支えられていた株式市場はどうなってしまうだろうか。多くの専門家が言っている通り、景気後退は避けられない。しかし多くの投資家が、経済成長率が下がる時には企業利益も減少するということを忘れている。
株価を支えていた低金利と企業利益の両方がなくなる時、株式市場はどうなるだろうか。筆者は当たり前のことを何度も繰り返し、誰でも予想できたはずの株価暴落をいつも予想してきたのである。