マイナード氏: 株価がまだまだ底値から程遠い理由

Guggenheim Partnersのスコット・マイナード氏がFOX Businessのインタビューで株式市場の見通しについて語っている。

急落した株式市場

8月26日、ジャクソンホール会議でFed(連邦準備制度)のパウエル議長が講演し、インフレ退治のため金融引き締めを継続する強い意志を示したことによって米国株が急落した。

このジャクソンホール会議にマイナード氏は招待されているのかと聞かれて、マイナード氏は次のように答えている。

わたしはジャクソンホールに招待されるほど意識高い系ではない(原文:not woke enough)。

ジャクソンホール会議が金融業界でどう認識されているのかが垣間見える会話である。ここではESG投資などの話題も扱われる。ちなみにESG投資には最近政治的な逆風が吹いているようである。

さて、しかし最近の急落まで株式市場は少しの間上昇を続けていた。S&P 500のチャートを掲載しよう。

7月からの株価上昇は弱気相場における一時的な反発に過ぎなかったのか? まず考えるべきは今後の利上げの動向と、利上げと株価の関係だろう。

利上げと株式市場

Fedはインフレ抑制のために利上げを開始し、政策金利は現在2.25%まで上げられている。金利先物市場によれば、年末までに3.5%以上まで上げられることが予想されている。

このペースは今後のインフレ統計によっては減速するかもしれない。それが7月以降株価が反発していた理由である。

だがマイナード氏によれば、利上げのペースが弱まるか弱まらないかは大した問題ではない。彼は次のように述べている。

株式市場はまだ底値からは程遠いだろう。過去のデータによれば、興味深いことにFedが利下げを始めることなしに株式市場が底打ちしたことはない。

彼曰く、問題は利上げが弱まるかどうかではなく、利上げが利下げに転換するかどうかである。

株式市場の底入りタイミング

実際にはどうなっているのだろうか。例えば2018年の世界同時株安はパウエル議長による金融引き締めによって引き起こされたが、それが底打ちしたのはパウエル氏が株安は自分の金融政策が原因だと認め、ハト派に転換したからである。以下は当時の記事である。

また、リーマンショックの時がどうだったかと言えば、以下の記事で解説した通り、Fedは2007年に利下げを開始したが、株安を止めることは出来ず、株価の底打ちは2009年となっている。

更に遡って2000年のドットコムバブル崩壊の時も、利下げをしても株安を止めることは出来なかった。以下の記事で解説している。

最近の相場はこのケースに近いという意見も出ている。

結論

ということで、マイナード氏によると市場で議論されているような、利上げペースが弱まるかどうかという議論は、株価が反発するかどうかとは無関係ということになる。

問題はむしろ、Fedが利下げに転じた場合にそれが株安を止められるのかだろう。それは上記のように過去の相場によれば、場合によるということになる。

その理由は単純である。株価は金利と企業利益に左右されるので、金利が下がった場合も企業利益減少による悪影響のほうが大きければ株価は下がり続ける。

では現在の相場において企業利益は(そして株価は)どうなるだろうか。それについては以下の記事で解説しているので、参考にしてもらいたい。