アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューで中国経済の今後について語っている。
中国は次の覇権国家か
中国経済に関しては様々なことが言われてきた。特に、世界最大のヘッジファンドを運用するレイ・ダリオ氏は中国がアメリカを追い越し覇権国家になるということを長らく主張してきた。
しかし最近ではダリオ氏は中国株への投資を減少させてきている。
理由は恐らく中国経済の雲行きが怪しくなってきたからだろう。元々中国経済の雲行きは怪しかったのだが。
原因は何よりもまず恒大集団の破綻などに象徴される不動産バブルの崩壊である。中国では不動産は資産運用の中核を担っており、日本のバブル時代にそうだったように、中国人は不動産価格は永遠に上がり続けるものと信じ、老後の資金の多くを不動産に投入してきた。
だがそのバブルがついに崩壊したのである。これは長年続いたバブルの崩壊であり、内容についてはジョージ・ソロス氏が以下の記事で解説している。
リベラル派のソロス氏は明らかな反中的バイアスにもかかわらず、自分の政治バイアスに流されず、中国経済をしっかり分析しているところが流石である。
また、中国経済の問題は不動産バブル崩壊だけではない。中国では今なおゼロコロナ政策でロックダウンが行われており、これが中国経済に大きくのしかかっている。
中国では感染者が出て突然封鎖されそうになるデパートから市民が逃げ出す様子や、厳格なコロナ規制から入荷した魚にPCR検査を施そうとする様子などが報じられている。種族で生き物を区別することのない極めてポリティカルコレクトなコロナ対策だと言えるだろう。
サマーズ氏の見方
さて、サマーズ氏はこうした中国の状況をどう見ているか。彼はインタビューで次のように述べている。
問題は、中国がこれらの問題に対してどう反応するか、そして中国が将来どういう立ち位置にいられるかということだろう。
「どういう立ち位置」と言うのは、ダリオ氏などの提唱する中国覇権国家論を前提としているのだろう。中国はいずれアメリカを追い越すのか? サマーズ氏は次のように考えている。
半年前や1年前には、中国経済が市場の為替レートで計算したGDPに関していずれ米国経済を追い越すということは自明の理のように言われていた。だが今ではその見通しには暗雲が立ち込めている。
サマーズ氏は住宅バブル崩壊とコロナ対策以外にも中国経済の問題を指摘する。
中国はあらゆる困難に直面しているように思う。大きな金融危機、今後の成長が何処から来るのか、広範な企業に対する中国共産党の介入の増加、人口動態の問題など。
人口動態については、人口増加の鈍化によって先進国が低成長に陥るとする長期停滞論で有名になったサマーズ氏の十八番である。世界第2位の経済を誇る中国もついに先進国の問題が近づいてきているのであり、しかも一人っ子政策で若い層を意図的に少なくした中国は他の国より問題が大きい。
中国共産党の企業への介入については、他の論者であれば異論があるかもしれない。
さて、ではサマーズ氏の結論は何なのだろうか? 中国はアメリカを追い抜いて覇権国家となるのか? あるいは中国の成長は住宅バブルとともに終わってしまうのだろうか。
サマーズ氏は次のように述べている。
これまでも言ってきたことだが、2020年における中国経済に対する人々の予想は、1960年におけるソ連に関する見通しや、1990年における日本の見通しと同じようなものだと今後振り返って思うだろう。
少なくとも言えるのは、中国はこれから少なくとも数年は住宅バブルのツケを払うということである。影響を大きく受けるのは鉄鉱石と銅の需要だろうということは筆者は以前より主張している。そこには投資機会がある。
日本の再来か
30年前に日本がどう見られていたかについては、丁度良い例がある。ジョージ・ソロス氏が著書『ソロスの錬金術』で日本のバブル崩壊前に次のように書いていた。
この規模のバブルが爆発することなく軟着陸に成功した例は過去にない。当局は日本の債券市場の暴落を防ぐことはできなかったものの、株の暴落を阻止することはできるかもしれない。持続的な円高が当局に味方している。
もし当局が成功すれば、史上初の出来事になる。つまり、金融市場が社会の利益のために操作される新しい時代の幕開けとなる。
日本は成長路線を突き進んでおり、わたしたちは落ち目である。問題は、米国やその他の国が、強い国民意識を持った異文化の日本という国に統治されることを良しとするかどうかである。
今読めば驚くべき文章だが、当時はそれが当たり前の見方だった。そしてソロス氏でさえもその見方に囚われていた。
中国はどうなるだろうか。ダリオ氏の今の見方も、当時のソロス氏の見方と同じなのだろうか。日本に関しては間違ったソロス氏だが、今の中国に関しては厳しい見方をしている。
結論
少なくとも言えるのは、魚くらいはPCR検査を免除してあげても良いのではないかということである。前回の記事もそうだが、海外の政治ニュースはもはや大喜利のようである。
海外の人々は大丈夫なのだろうか。
だが一方で、宗教団体が政治に深く関係していたことで騒ぎになっている日本も、他の国のことは言えないだろう。この宗教団体は信者に高額なお布施を要求したり、明らかに何の役にも立たないものを高額で売りつけたりしながら、信者は特に文句を言うこともなく、長年栄えてきたという。
ちなみにその宗教団体の名前は自民党である。一般にお布施は所得税や社会保険料と呼ばれ、不要なものを山のように作る事業は公共事業と呼ばれている。
日本人は政治に宗教団体が絡んでいることに今更気付いたらしい。恐らく最近レーシック手術でも受けたのだろう。
ソロスの錬金術