Form 13Fも含め、今年前半の株価下落後の著名ファンドマネージャーらの行動が次々に明らかになっているが、今回はレイ・ダリオ氏が運用する世界最大のヘッジファンドBridgewaterの欧州株空売りポジションについて報じたい。
世界的な下落相場
周知の通り、今年の前半はほとんどの国の株式にとって下落相場となった。しかし筆者を含め、グローバルマクロ戦略の投資家にとっては金利上昇による株価下落は格好の獲物であり、ダリオ氏も例に漏れず大きな利益を上げていた。
この記事ではその理由が株式の空売りであるとは明示されていなかった。「空売りで儲けています」と公表するファンドマネージャーはなかなかいない。不要な批判を呼ぶからである。(しかし世間は空売りではなく、向こう見ずな買いこそがバブルを形成し下落相場をもたらすことには気付いていないのだが。)
しかしBridgewaterの空売りを裏付ける情報が1つあった。EUの空売り開示規制である。
この開示によれば、Bridgewaterは5月時点で57億ドルの欧州株空売りポジションを持っており、これはその後6月には105億ドルに増額された。
内容はドイツ株やフランス株など様々だが、例えば今年のドイツ株は次のように推移している。
他の国の株式と同様、ドイツ株も7月にとりあえずの底を付けている。米国株の底が6月だったことを考えると、少し遅かったと言えるだろうか。
それでBridgewaterの欧州株空売りポジションはどうなっただろうか? 6月時点で105億ドルだった欧州株空売りは、Bloombergによれば7月には8億ドルまで減っている。
ほぼ手仕舞いしたということである。欧州株の底が7月だったことを考えると、ハイテク株の反発を拾ったジョージ・ソロス氏と同様の的確なトレーディングと言えるだろうか。
結論
これで株価が下落した後の著名投資家の動向はほぼ網羅できたのではないか。
これでソロス氏、ダリオ氏、ドラッケンミラー氏の3人ともが少なくとも空売りの手を休めたということになる。
だが報じられる著名投資家のポジションはリアルタイムではない。だから株価が反発した後の彼らの動向についてはまだ分かっていない。ドラッケンミラー氏は株価が反発すれば空売りを再開すると言っていたが、彼は今何を考えているだろうか。
また、ダリオ氏についてもインタビューで語っている長期の相場見通しは明るいものではない。
そこでもう一度強調したいのだが、下落相場は思っているよりも長いということである。リーマンショックでは1年半、ドットコム・バブル崩壊では3年近く下落相場は続いた。
その長い下落相場の間には比較的大きな反発もあった。最近はそれすら知らない投資家が多いのかもしれないが、それが下落相場というものである。
だから株価が数ヶ月上げ続けることに大した意味はなく、結局は短期的な株価動向に惑わされることなく長期的な見通しを予想しなければならない。少しの値動きに一喜一憂している個人投資家は楽しそうである。
一方で筆者は既に決断を下した。他の投資家の相場観もいずれ出てくるだろう。そちらも引き続き報じてゆく。