3月15日から16日まで行われた米国FOMCの金融政策決定会合では、政策金利の維持が決定された。決定は満場一致ではなく、カンザスシティ連銀総裁のジョージ氏が0.25%の利上げを主張したが否決された。ジョージ氏はタカ派で知られる。
発表された声明は下記の記事で取り上げた1月のものとあまり変わっていないが、原油価格や株式市場が反発したにもかかわらず、「世界経済と金融市場の動向は引き続きリスクとなっている」との表現を記載し、1月に引き続き市場への配慮を示した。
現在の市場の回復を考えれば、個人的にはFed(連邦準備制度)はもっとタカ派になって良いと考えていたので、その予測からすれば今回の発表はハト派ということになるだろうか。市場もそのように受け取ったようであり、ドルが下落、金価格などが上昇している。順にチャートを見てゆこう。
ドルは下落
先ず、為替相場はドル安で反応している。声明はそれほどハト派といった感じではなかったが、Fedが利上げへの強硬姿勢を見せなかったのが意外だったのだろう。わたしもそう思う。以下はユーロドルのチャートである。
ドル安ユーロ高で反応している。次はドル円であり、こちらもドル安となっている。
2016年のドル安シナリオについては去年より言及しているが、日本とユーロ圏の長期金利にこれ以上の下落余地があまり残されていないことを考えれば、ドル円を買うどころかショートしたくなってくるくらいであるが、欲は出さないでおくこととしよう。
商品市場は上昇
ドル安を受けて金と原油が上昇した。株式市場の好調を受け、金価格はやや弱含んでいたが、その下落分を打ち消したと言える。
金については12月からの長期の買いを継続である。個人的には今回の会合でFedがタカ派に傾く可能性を覚悟していたので、金の投資家としてはリスクが減ったと言える。
また、原油も同様に上昇している。
以下の記事で報告した通り、産油国による生産量凍結の試みを見てエネルギー関連資産にポジションを取ったのは正解であった。
一方で、シェール企業の最新の決算は、40ドル台が原油高の限界であることを示している。以下の記事で説明した通り、生産量はさほど減っていないのである。
ただ、40ドル台というのはドル安を加味しない数字である。それならば、金か通貨バスケットに対して原油の空売りを始めてみようか? いずれにせよまだ30ドル台であり、もう少し様子を見るとしよう。
米国株は小幅上昇
次は株式市場であるが、米国株は小幅上昇となった。低金利継続を素直に好感したのだと思う。
一方で通貨高となったユーロ圏や日本の株式市場の反応は鈍い。米国株との比較で見てほしいが、以下はドイツ株のチャートである。
以下は日経平均先物である。
米国株については、2015年の高値を大きく超えては上がらず、急落の可能性は常に存在すると昨年末に予想したが、2016年に入ってから概ねその通りになっていると思う。
この記事ではオプションを使い、株価が上昇しなければ(下がれば、ではない)利益の出るポジションを取ってゆくと発表した。米国株は去年の高値に近づきつつあり、買いでも空売りでも利益の出ない状況となっているが、上記の記事で説明したポジションは順調に利益を出している。
株式市場はどうなるか?
しかしこのポジションを続けていても良いだろうか? ハト派になりつつあるFedや、反発しつつある原油価格と、米国株に有利な条件が増えつつある。長期停滞によりアメリカ経済が減速する予想は一切変わっていないが、そろそろ一旦ポジションを閉じても良いかもしれない。経済減速は必ずしも株安ではないからである。
そう言えば、著名ヘッジファンドマネージャーのジョージ・ソロス氏は、以下の記事で取り上げたダボス会議でのインタビューで米国株の空売りを宣言していた。彼はFedの緩和への逆戻りが株価を支えるシナリオをどう考えていたのだろうか?
一方で、世界最大のヘッジファンド、Bridgewaterを運営するレイ・ダリオ氏は少し前に株価反発の可能性を示唆していたが、こちらはきっちりと当たっていると言える。
ダリオ氏は消費者にお金をばら撒くヘリコプターマネーの可能性さえ示唆していた。追い詰められた中銀の金融政策は、いずれ次の次元へと歩を進めるのかもしれない。投資家はそろそろ次のシナリオを考えつつ動くべきなのだろう。