世界最大のヘッジファンド: 気候変動への対処は犠牲が大きすぎる

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がFOX Businessのインタビューで脱炭素政策のコストと財政赤字のもたらす結果について語っている。

脱炭素政策のコスト

相変わらずインフレと電力不足が話題になっているが、政治家や中央銀行家がその原因をロシアに求める一方で、実際にはその原因はコロナ後の現金給付と化石燃料を掘れなくする脱炭素政策である。

ここの読者には周知の事実であり、一般の人々にはいまだに知られていないことだが、ダリオ氏はこの件について再び次のように語っている。

気候変動への対処には莫大なコストがかかる。

原油やその他化石燃料の採掘に投資をしなければ、需要と供給の問題が生じる。

SDGsだかESGだか知らないが、化石燃料の供給量を減らせば化石燃料の供給量は減る。(同語反復である。)そして社会はエネルギー不足に直面する。現に今そうなっている。

これは例えばSoros Fund Managementのドーン・フィッツパトリック女史などが去年から警告していたことである。

そして社会の直面する問題は脱炭素政策だけではない。ダリオ氏はこう続ける。

これから社会はたくさんのコストに直面する。クリーンエネルギーへの移行は大きなコストがかかる。社会福祉には大きなコストがかかる。適切な防衛政策には大きなコストがかかる。

ロシアのウクライナ侵攻以後、防衛費は世界的に増えるだろう。アメリカの軍事支出が増えるだけでなく、ウクライナを対ロシアの尖兵として使った欧米が、実際にウクライナが危機に陥った時に参戦しなかったという事実は、欧米の言う安全保障が何の保証もない口約束であることを証明した。

台湾もまたペロシ氏個人の政治的キャリアのために利用されるためだけに使われ、彼女の個人的利害のためにアジア情勢は緊張化している。アメリカが台湾のために中国と戦争をすることはない。彼女の言うことを信じる人間には、ウクライナのニュースを運ぶ伝書鳩がまだ届いていないのだろう。

賢明な小国は自分で自分を守らなければならないということに気付き始めている。スイスはこの点でも賢明である。日本だけが何の意味もない日米安保に金を払い続けている。

世界はどんどん費用のかかる政策に追い込まれてゆくが、経済では物不足でインフレが起こっている。

どんどん物資不足になる実体経済

ただでさえ物資が不足する中、その費用はどうやって捻出するのか? ダリオ氏は2つの方法を説明する。

その資金を賄うには、赤字を出して人々から徴税するか、紙幣を印刷するしかない。だが徴税は非常に難しいだろう。

増税は政治的に困難だが、紙幣印刷は容易である。結局はどちらも同じことなのに、人々は紙幣がただで降ってくるという幻想に騙される。

そして紙幣とともにインフレがプレゼントされる。

一番最初から紙幣印刷によるインフレを警告していたダリオ氏は、ここの読者にはよく知られたフレーズを次のように繰り返す。

紙幣は食べられない。紙幣を作り出すことは出来るが、紙幣は食べられない。紙幣は富ではない。富は生産性だ。

紙幣だけを増やしても紙幣の価値が毀損するだけである。本当に豊かになるためには生産しなければならない。

日本政府はいまだにインフレを補助金で退治しようとしている。火事に原油を撒いて消そうとするようなものである。

インフレは需要過多、供給過少であるから、インフレを退治するには需要を減らし、供給を増やすしかない。

これほど簡単なことに、人々はいつまで気づかないのだろうか。2年前から筆者もダリオ氏も同じことを言い続けているのである。