ドラッケンミラー氏: 今後6ヶ月でドル空売りへ

ジョージ・ソロス氏のSoros Fund Managementを率い、ポンド危機におけるポンド空売りで有名となったスタンレー・ドラッケンミラー氏が、Sohn Conferenceで今後のドル相場の見通しと空売りについて語っているので紹介したい。

ドラッケンミラー氏の株式空売り

少し前に紹介した通り、ドラッケンミラー氏は2022年の株安相場で既に大きな利益を上げている。

一方で株式の空売りについては、株安は長期的に続くとしながらも今は小休止していると話していた。彼は株式市場の現状について次のように述べている。

建設会社は、良いファンダメンタルズが予想されているにもかかわらず、高値から50%下落している。

運輸会社は、一様に記録的な利益を発表しているにもかかわらず、高値から40%下落している。

筆者は主に株価指数、つまり株式市場全体を空売りしているから、個別株の目先の騰落でポジションを解消したり増やしたりせず、基本的には大底まで空売りを続けてゆく方針である。

一方でドラッケンミラー氏はSoros Fund Managementを率いていた頃からトレーダーの気質があるから、長い下落相場の良いところを取ってゆこうとしているのだろう。

ドラッケンミラー氏の債券空売り

また、ドラッケンミラー氏はインフレで金利が上昇することを見越して債券も空売りしていた。金利上昇は債券価格下落を意味するからである。

しかし債券についても次のように語っている。

状況はより難しくなっている。経済がこれから弱くなってゆくという明らかな指標が出ているからだ。

債券を持ちたいとは思わないが、それ以上に債券を空売りすることに危険を感じている。3ヶ月から6ヶ月前には、債券空売りのリスクリワード比はもっと良かったのだが。

金利上昇を見込んでの債券空売りという戦法も、景気後退が近づき金利に下落圧力がかかり始めると怪しくなってくる。

インフレは金利上昇方向の圧力だが、景気後退は金利低下方向の圧力だからである。

ドラッケンミラー氏のドル空売り

ドラッケンミラー氏は、ここ半年ほど続けていた株式空売り、債券空売りは、以前ほどのリスクリワード比ではないと考えている。

ではドラッケンミラー氏の次のトレードは何だろうか?

為替市場は非常に興味深いと思う。為替相場ではまだ大したことはやっていないが、今後6ヶ月のいつかのタイミングで自分がドルを空売りしていなければ驚くだろう。

どうやら彼も筆者と同じようなことを考えているようだ。ジェフリー・ガンドラック氏はドル下落を来年だと考えているようだが、ドラッケンミラー氏のタイムフレームは作者の相場観に近い。

しかしいずれにしても皆同じことを考えている。ドラッケンミラー氏が今後6ヶ月と言っているのは、明らかに彼の金利の動向予想にも関連しているだろう。景気後退が近づくにつれ、金利は上がりにくくなる。その問題は今後半年で大きく顕在化してゆくだろう。

現在、ドル相場が上昇していることについてドラッケンミラー氏は次のように説明している。

現在、14兆ドルがドルに流入している。アメリカが金融引き締めで先行しているからだ。

だが、アメリカが利上げをしている理由はインフレであり、インフレとはドル紙幣の価値がなくなっていることである。

しかし為替相場はインフレよりも金利上昇自体に反応し、短期的にドル高という逆の方向に動く。この辺りの議論は以下の記事で詳しく説明してある。

紙幣を好きなだけ印刷し、現金給付を行い、インフレになってもドルは下落しない。それはドルが基軸通貨だからである。基軸通貨は世界中で決済などに使われ、常に需要があり、常に買われる。

しかしウクライナ情勢以後、それは変わりつつある。多くの国がドル保有を避けようとしているからである。

西側のニュースばかり聞かされている日本人には、アメリカがドルを制裁のための武器として使っているということの実感が沸かないだろう。そういうことをしてもドルは下落しないと無根拠に考えるかもしれない。

一方、アメリカ人であるドラッケンミラー氏は次のように述べている。

アメリカは特別だという話もある。だが本当に今でもそうだろうか。

偏った観点は相場において命取りである。筆者は日本人から政治観が偏っていると言われることがある。

しかし偏っている人間には、何が偏っているかが分からない。西側のニュースを無根拠に信じる一般的な日本人と筆者のどちらが偏っているだろうか。それは相場が証明してくれるだろう。