株安が止まらない。米国株は最近の安値を更新し、日本株もそれに応じて下落している。
株安がいつまで続くかを気にしている人も多いだろうが、それを予想する1つの方法はボラティリティ指数を眺めることである。
下落相場の雰囲気
まずは米国株のチャートから掲載しよう。以下はS&P 500のチャートである。
順調に落ちている。周知の通り、筆者は以下の記事の頃から米国株を空売りしているので株安で何の問題もないのだが、それにしても大きな反発もなしに落ちてゆくものだと思う。
このチャートだけを見ていれば、淡々と下落を続けているようにしか見えない。だが相場の雰囲気は少しずつ変化している。それを可視化してくれるのが今後の株価の上下動の激しさの市場予想値であるボラティリティ指数である。
S&P 500のボラティリティ指数は次のようになっている。
じりじりと下値を切り上げてきているのが分かるだろうか。
ボラティリティ指数の読み方
ボラティリティ指数の上昇は何を意味するだろうか。思い出してほしいのは、以下の記事である。
この記事は、市場の雰囲気という観点から現在の暴落相場の底がいつかということを予想したものである。
そこではまず、米国株は上がり続けるという金融庁のデマに乗せられた日本の個人など、多くの相場の素人が株式市場に参入している今年前半の状況をバブルであると定義した。
そして彼らがパニックになり狼狽売りをする状態をバブル崩壊の底値であると定義している。
今は明らかにその真ん中にある。
底値までの距離
だがそれは天井よりの真ん中だろうか? 大底よりの真ん中だろうか?
それを教えてくれるのがボラティリティ指数である。過去の暴落と比べるためにもう少し長期のチャートを掲載しよう。
このチャートから、現在の市場のパニック度合いは2020年のコロナ株安はおろか、2018年の金融引き締めによる世界同時株安にも及んでいないことが分かる。
だが市場は徐々に不安がってきている。株安があまりにも止まらないからである。
市場の不安を予想する
この市場の不安が今後どうなるかを予想してみよう。
短期的な反発はあるかもしれないが、基本的に株安はこのまま進み、市場はまず2018年と同じ程度のパニックに陥る。金融引き締めの話は聞いていても、それを実感しないまま株式を持ち続けている人がパニックに陥るだろう。
その時米国株は何処まで下がっているだろうか? もう少し長期の米国株チャートを持ってこよう。
現在のボラティリティ指数が32だから、ここから2018年の水準である50までボラティリティが上がるためには、恐らく株価は3,200から3,400程度の水準まで落ちなければならないのではないか。
これはコロナ前の水準までの逆戻りを意味する。そこまで下がれば、まだ株式を保有しているが事態の深刻さを理解していない人々がパニックに陥ってくるはずである。
だがそれでようやく2018年の同じ程度の混乱だということを考えてもらいたい。そして2018年の金融引き締めは、現在の金融引き締めの半分の規模であり、しかも当時は引き締めを止められたが今は物価高騰のために引き締めを止められないということを考慮しなければならないだろう。
ボラティリティ指数の終着点
だからボラティリティ指数はそこでは止まらない。その後ボラティリティ指数はどうなるだろうか? もう一度チャートを掲載しよう。
ボラティリティ指数が何処まで行くかを予想するためには、現在の危機がどれだけのものかを実感していなければならない。
現在の相場の状況はどういうものか。1980年のレーガン政権の頃から40年以上株価を支えてきた金融緩和の終わりであり、しかもそれは利上げと量的引き締めという形で逆回しになっており、インフレが収まるまでそれを止めることはできない。
株式を買い持ちにしている個人投資家に聞けば、「金融引き締めのことは分かっている」と言うだろう。だが彼らは何も分かっていない。2021年に金融庁に騙されて株を買った人々は、2013年のアベノミクスで量的緩和がどれほど激しく株価を支えたかを知らない。
だがそれを知っている人は、その逆回しである量的引き締めがどれほど激しく株価を下落させるかを知っているはずである。しかしこの危機感は、ボラティリティ指数を見る限り、まだ大多数の市場参加者に行き渡っていない。
だから株式市場はこれからまず2018年と同じパニックに陥り、ボラティリティ指数は50まで上がる。
そして「ここまで落ちたからにはそろそろ底だろう」と思う人々に対して、コロナ株安のようにボラティリティ指数が80まで上がる更なる暴落をもって40年の巨大緩和バブルの崩壊がどういうものかを思い知らせるだろう。
結論
結果として、やはりS&P 500は2,500程度まで行くのではないか。ボラティリティ指数はそれを告げている。
そして株の空売り以外に利益を出す方法が少ない現在の相場で、ボラティリティ指数の買いはポートフォリオの多様性を増やしてくれるだろう。
勿論、ボラティリティ指数は底値を見極める1つの方法に過ぎない。他にも中央銀行が何処で方向転換するかなど、考えなければならないことは多い。
だが株価が何処に行くかは既に決まっている。少なくとも、筆者や著名ファンドマネージャーらはそう思っている。
そして彼らは、一般の人々が事態の深刻さをまだ楽観視していると感じる限り空売りを続けるだろう。少なくとも筆者はそうするつもりである。