Form 13F: ジョージ・ソロス氏が米国株をショート、原油関連株を買い下がりか

毎四半期恒例のことだが、2015年末の機関投資家の買い持ちのポジションが公開されたので、いつも通り取り上げたい。周知の通り2015年8月から世界中の金融市場が荒れており、多くのファンドマネージャーが損失を出しているなかで、興味深いトレードをしている人物は少なかったのだが、やはり今回はジョージ・ソロス氏に注目せざるを得ないだろう。

2016年1月に報じた通り、スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム(通称ダボス会議)にて、ソロス氏は中国バブルは既に崩壊していると発言し、米国株とアジアの通貨を空売りしていることを公表した。

これに対して中国政府が怒涛の反論を国営メディアに掲載し話題となっていたが、その後初めてのポジション公開となる。前回のForm 13Fでは実は中国株を買っていたソロス氏だが、その後どうなったのだろうか?

中国関連銘柄はすべて売却

先ず、2015年9月末の彼のポートフォリオでは、中国株に投資するETFであるiShares China Large-Cap ETF (NYSEARCA:FXI、Google Finance)と、Alibaba (NYSE:BABA、Google Finance)が最大ポジションの一部となっていたが、今回の12月末のポートフォリオからはこれらの銘柄が消えている。つまりは12月までのいずれかの時点で売却したということである。

2016-2-19-ishares-china-large-cap-etf-nysearca-fxi-chart

ちなみに上記のETFは9月末から20%ほど上昇した後に下落しており、恐らくはその辺りのタイミングで売り抜けたものと思われる。いつもながら彼の短期売買は見事である。

原油関連銘柄を購入開始か

では逆に、彼が2015年の最終四半期に買い始めた銘柄の中で一番面白いものはSPDR S&P Oil & Gas Exploration & Production ETF (NYSEARCA:XOP; Google Finance)のコール・オプションの買いである。これは原油や天然ガスの採掘企業を集めたETFである。

金額自体は5800万ドルと、分散された彼のポジションのなかでも大きい方ではないのだが、少なくともソロス氏が原油反発を気にし始めたと受け取って良いのではないかと思う。あるいは、現物ではなくコールの買いなので、何らかの一時的な反発を予想していたということかもしれない。但し、周知の通り原油は去年末より下落傾向にある。以下はこのETFのチャートである。

2016-2-19-spdr-s-and-p-oil-and-gas-exploration-and-production-etf-nysearca-xop-chart

原油については多くの投資家が気にしており、反発を予想する声も多い。

わたし自身は、原油安は長らく続くが、2016年後半までには底を迎えると予想している。産油国の動向を見て、下値は限られると判断するようになったことも報告した。

S&P 500をショート

最後に取り上げるのは米国株全体に対するソロス氏の見方である。残念ながらForm 13Fでは彼の買いポジションしか見られないのだが、それでもSPDR S&P 500 ETF (NYSEARCA:SPY; Google Finance)のプット・オプションの買い、つまりS&P 500の下落に賭けるオプションの買いが掲載されている。

ただ、このオプションもポートフォリオ全体から見れば少額であり、上記の記事ではソロス氏は米国株の空売りを公言しているので、Form 13Fでは見られない直接の空売りポジションが多くあるのだろう。

そもそも今回のForm 13Fに報告されている買いポジションの総額は60億ドルであり、300億ドル近いと言われる彼の資産の20%でしかない。彼が本気で米国株を買っている時にはこの金額ももっと高くなるため、彼が株式市場に悲観的な見方をしていることは確かなようである。

彼の原油に対する見方についてはもっと詳しく聞いてみたいものであるが、Form 13Fから読み取れることは以上である。2016年は様々な投資家が各々の相場観で投資をしている。単に弱気に転換するタイミングだけが難しかった2015年よりもよほど面白い市場になりそうである。