物価高騰で株式市場が下落を続けるなか、注目のアメリカCPI(消費者物価指数)が発表され、5月のインフレ率は市場予想を上回る8.5%(前年同月比)となった。この数字を受け株式市場は再び急落している。
インフレ止まらず
インフレが世界的な社会問題となる中、今年の4月から6月のインフレ率には専門家の注目が特に集まっていた。
何故ならば、この数ヶ月はこれまでインフレを警告してきたファンドマネージャーらもこの時期にはインフレ率が下がる要因のあることを認めていたからである。
何故かと言えば、前年同月比のインフレ率とは前年の同じ月からどれだけインフレになったかを計算するものだが、2021年3月にアメリカで行われた3回目の現金給付のせいで、比較対象となる2021年4月から6月の物価指数が急騰しているからである。
だからインフレを軽視するFed(連邦準備制度)を批判し、物価高騰を警告し続けてきたガンドラック氏も、ここ数ヶ月でインフレ率は減速すると予想した。
実際、4月の数字は予想を上回ったものの、3月よりも減速していた。
しかし5月の数字はどうだろう。チャートを見てみよう。
8.5%となり、4月の8.2%から切り返している。これで前年同月の数字が高いためインフレになりにくい月は次の6月だけとなった。そこから先はどうなるだろうか。
インフレの原因
インフレは誰もが思っているよりも力強いようだ。その一因は間違いなく原油価格だろう。原油価格のチャートは次のように推移している。
ロシアのウクライナ侵攻を受け、アメリカとヨーロッパはロシア産の原油を買わないと決めた。
その決定は西側諸国をエネルギー資源不足に陥らせ、日本を含む西側諸国では電気代などが高騰している。
一方で経済制裁を受けたロシアはどうなっているかというと、NATOの対ロシア戦争に加わらないと決めた中国やインド、ハンガリーなど中立国に原油を売っており、特に問題は起きていない。
何度も言うが、西洋は自殺している。
ガンドラック氏の議論を認める一方で、このように原油価格の高騰が続く状況でインフレ率がどうやって下がるだろうかというのはずっと思っていた。また、原油価格についてはウクライナ後に一度100ドルまで急落した時点で次のように書いておいた。
西洋人は原油も天然ガスもロシアから資源を買うのも嫌だという。この状況で西側の原油価格はどう考えても長期的に上がらざるを得ない。
投資家の観点から見れば、1バレル100ドルという今の水準は、将来の水準を考えればむしろかなり安いはずだ。
そして今の値段は120ドルである。そして120ドルで済むだろうか?
結論
インフレはどうやら人々が思っているより力強いようだ。そして原油価格もそうだが、最大の原因は8.5%のインフレ率に対して、政策金利がまだ0.75%までしか上がっていないことである。
インフレ率が8%上昇したならば、金利が8%上昇してはじめて実質金利は元と同じになる。だがインフレを抑えるためには実質金利を元々より引き締め的にする必要があるだろう。
実際には、その水準に行き着くより先に株式市場が急落してデフレ効果を生む。だがどちらにしても経済には不幸なことだろう。
事実、発表を受けて米国株は急落している。何度も言っているが、短期的な値動きに惑わされず、株価暴落という長期的トレンドを追いかけたいものである。