ロシアによるウクライナ侵攻を受け、日本を含む欧米諸国はロシア産のエネルギー資源の禁輸を行なっている。
これまで述べてきた通り、西側によるこうした措置でロシアは損をするどころかむしろ儲かっているのだが、今回の記事ではその内幕を詳しく見てみたい。
対ロシア経済制裁
まず大前提として、ロシアは世界市場におけるエネルギー資源の主要な輸出国である。原油も天然ガスも多く輸出している。
西側諸国はそのロシアに経済的打撃を与えるべく、これらの商品の輸入禁止を考えた。結果として西側諸国に入ってくる原油の量は減り、価格が高騰した。以下はアメリカにおける原油価格のチャートである。
原油価格については、急騰後に一旦下がった段階で次のように書いておいた。
投資家の観点から見れば、1バレル100ドルという今の水準は、将来の水準を考えればむしろかなり安いはずだ。
読者の役に立っただろうか。
さて、ここでまず指摘しておきたいのは、西側におけるエネルギー価格高騰はロシアのせいではなく、西側自身の制裁のせいだということである。それで西側に所属する国民は電気代高騰に苦しんでいる。
では自国民を犠牲にしたこの政策はロシアにダメージを与えているのだろうか? ロシア嫌いで知られるファンドマネージャーのジョージ・ソロス氏が次のように警告していたことを思い出したい。
原油の禁輸は間違った方法だ。原油は何処にでも輸送できる。船に乗せれば何処へでも運べる。ヨーロッパがそれを買わなければ中国人が喜んで買うだろう。だから原油の禁輸には意味がない。
結果として、原油価格は西側の制裁のために高騰しており、ロシアはエネルギー資源を輸出し続けているのでむしろ儲かっている。
つまり西洋諸国はロシアが儲かるようにするために自国民を犠牲にしているのである。日本国民は自分が無意味な政策のために犠牲になっていることが分かっているだろうか?
中立国の態度
だが世界に存在するのは、ウクライナ政府に所属する真正のネオナチ愚連隊さえ「ウクライナの精鋭部隊」と言い直すような西側の情報統制に騙されている人々だけではない。
NATOによる戦争に協力せず、最初から「最優先課題はこの戦争に巻き込まれないこと」と表明したハンガリーなど、自国と他国のことを考えて動く中立の国は、西側が思うほど少なくはない。
そして自国民を犠牲にしてロシアを儲けさせる西洋の愚かな政策には決して乗るまいと決心している国がある。インドである。
ロシア産原油を買い漁るインド
インドは最初からロシアのエネルギー資源禁輸に反対し続けていた国の1つである。禁輸には何もメリットがないのだから、何故それに乗る必要があるだろうか。
ウクライナについてNATOにもロシアにも肩入れしないと決めた国ならば、原油をアメリカから買おうがロシアから買おうが同じことである。
それで日本人などが電気価格高騰で苦しむ中、インド政府は制裁で安くなったロシア産原油を精力的に買い続けてきた。
金融市場ではいつものことだが、安いものを買わない愚かな買い手がいれば、他の人はそれを買うことで利益を得ることができる。日本人は米国株などと言っていないで安い原油を買うべきなのだが、誰もそれに気づかない。
ただ、面白いのはインドは原油をロシアから安く買っているだけでなく、その原油は欧米諸国に転売されているらしいということである。
Wall Street Journalの報道だが、インドのエネルギー会社はロシアの原油を仕入れ、それを自国内で精製することでインド産の商品として市場に流し、それが米国市場に流入しているという。
また、Bloombergによれば、イギリスの石油大手Shellはラトビアに輸出されたロシア産原油をラトビアで他国産のものと混ぜることで、ヨーロッパ向けの商品にロシア産のものを混入させているという。ロシア産のものが49.9%以下ならばロシア産にはならないという解釈らしい。
結論
どうやらソロス氏が警告していた状態が当たり前のように横行しているらしい。当たり前である。欧米が買わなければ他の国が買うことになり、他の国が買ったものは更に別の国に流通させることもできる。
制裁で価格を無理矢理曲げようとしても、人為的な価格差は修正される。それが金融市場である。
何度も言っているが、このウクライナの戦争はウクライナ政府側に加担しても何の利益も正当性もないものである。
それどころか、原油禁輸では加担になっていないどころかロシアを利するだけの単なる自殺行為に過ぎない。
それで日本人は電気価格高騰を享受している。何故誰もこれだけのことが分からないのだろうか。反ロシアのソロス氏も嘆いているだろう。