債券投資家のスコット・マイナード氏がCNBCのインタビューで、ハイテク株および米国株の下落について語っている。いつもより遅い5月の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)における発言である。
インフレと米国株下落
米国株の下落が止まっていない。この辺りで一度反発があっても良さそうなものだが、もう2ヶ月も一辺倒の下げを続けており、しかもパニックというよりは秩序だった下落であることが特徴である。
また、中でも特に下がっているのがハイテク株である。年々キャッシュの価値が下がってゆくインフレにおいては、遠い将来のキャッシュフローを当てにしている高成長株ほどインフレで下がるのは当然なのだが、一方で足元の決算さえ悪い銘柄も出てきている。
Nasdaqは以下のように推移している。
かなり下がっているが、マイナード氏は次のように言っている。
ハイテク株はかなり妥当な株価水準まで下がっている。だがもっと下がるだろう。
「妥当な株価水準だがもっと下がる」という言い回しを司会に突っ込まれているが、マイナード氏は大真面目である。彼は次のように続けている。
何故ならば、下げ相場は通常妥当な株価水準では底打ちしないからだ。市場はいつも行き過ぎる。
市場はパニックになるまで底打ちしない
マイナード氏の考えは、著名投資家の間ではむしろコンセンサスのようになっている。もう1人の債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏も次のように言っていた。
市場はまだ無秩序にはなっていない。秩序が失われつつあるが、まだ無秩序ではない。完全な無秩序にならなければ底ではない。だからそれを待っている。
筆者も含め、経験ある投資家は今のマーケットのムードが底からは程遠いことを感じ取っている。
だがマイナード氏は感覚だけではなく、より定量的なデータを挙げている。
ボラティリティ指数はまだ30だ。本当の底値になるには、歴史的には40か50近い数字が必要になる。
今後の市場の上下動の激しさを織り込むボラティリティ指数は、ガンドラック氏の記事の時に筆者がデータとして補ったものである。やはりこの状況で考えることは皆同じらしい。
もう一度ボラティリティ指数のチャートを掲載しよう。
2008年のリーマンショック、2018年の金融引き締めによる世界同時株安、2020年のコロナ株安のどれと比べても全然パニックとは呼べない水準である。
マイナード氏は次のように述べている。
本物のパニックになるまでは、本物の底じゃない。そして下げ相場は適正価格では止まらない。それはいつも行き過ぎる。