機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fによれば、物価高騰で株価が急落するなか、ジョージ・ソロス氏のSoros Fund Managementは年始から行なっていた株価の下落に賭ける取引を大幅に増加させている。
ソロス氏の米国株空売り
Form 13Fは毎四半期ごとに公開され、今回の開示は3月末のポジション、前回の開示は12月末のポジションである。
前回の開示では、ソロスファンドは米国株の主にNasdaq連動ETFのプットオプションを買っていた。プットオプションの買いは株価の下落に賭ける取引だが、買い持ちなのでForm 13Fにも掲載される。
ソロスファンドは株価の下落を予想していたわけである。
その後インフレに弱いハイテク株で構成されるNasdaqがどうなったかと言えば、こうなった。
30%近い下落であり、トレードは見事に成功したと言うべきだろう。
さて、今回の開示は3月末のポジションについてのもので、3月末と言えばこのチャートの真ん中辺りになる。
Nasdaq ETFの空売り規模がどうなったかと言えば、前回は2.8億ドル分のETFに対するプットオプションを買っていたものが、今回は3.7億ドル分となり、下落に賭けるポジションを30%増大させている。
だがそれだけではない。前回はあまり規模が大きくなかったS&P 500連動のETFのプットオプションも2.5億ドル分に増やされており、ソロス氏がインフレに弱いハイテク株だけではなく米国株全体を空売り対象にしたことが分かる。
その後も米国株は下がり続けているので、ソロス氏の空売りは見事に成功したことになる。
個別株の動向
空売りが増やされているだけではなく、買いポジションも減少しているが、しかし個別株を見てゆくと増えているものもある。
そして驚くべきことに、ソロスファンドは新興電気自動車メーカーのRivian Automotiveを暴落のなかで買い増ししている。
Rivianは去年11月に上場した高成長株で、ソロスファンドが上場前から投資していた銘柄である。
現在ソロスファンドを運用しているドーン・フィッツパトリック氏は上場時のRivianの株価が割高であると仄めかしていたから、下落前に売っているのではないかと思っていたのだがむしろ買い増しており、株数で言えば30%増えている。
ソロスファンドはRivianに初期から投資していたから、恐らく今の価格でも含み益になっているのだろうが、インフレが収まっていない状況で典型的なグロース株を買い増すのには勇気が要る。
だが勿論、Nasdaqの空売りと組み合わせられていることが前提だろうし、Rivianに関しては長期投資だということだろう。
結論
ということで、Soros Fund ManagementのForm 13Fをレビューした。Form 13Fには買いポジションしか掲載されないので、プットの買いではない純粋な空売りの量については不明だが、ソロス氏やフィッツパトリック氏が現在の相場をどのように見ているかについては十分伝わってくる。
株価下落の原因はインフレのために中央銀行が金融引き締めを止められないことである。こうした状況では、ソロスファンドのようなグローバルマクロのヘッジファンドにとっては本領発揮の場面ということになる。筆者も年始に公開した以下の投資方針に従って今年は莫大な利益が出ている。
他の著名投資家のポートフォリオはどうなっているだろうか? 引き続き機関投資家のポートフォリオを報じてゆく。また、下落相場のこれからについては以下の記事を参考にしてもらいたい。