世界的インフレで豪ドルやカナダドルなど資源国通貨は買いか?

2020年に世界中が現金給付を行なった頃から筆者を含む投資家たちが警告してきた世界的なインフレが、ようやく一般の人々にも意識されるようになった。筆者に言わせれば今更の話なのだが、日用品の価格が高騰し、人々はようやく慌て始めている。

だが原料価格高騰で利益を受ける国もある。エネルギー資源や金属、農作物などを輸出する資源国である。

インフレとコモディティ価格高騰

これは予想されたインフレである。

現在のアメリカのインフレ率は8.6%だが、最近突如として8.6%に上がったわけではない。

現金給付を行なった時からインフレになることは当然のシナリオで、8.6%になるまでに3%や5%を超えてきた瞬間があったのだが、Fed(連邦準備制度)のパウエル議長が何の根拠もなく「インフレは一時的」と言い続けていたために無視されていただけのことである。

しかし特に日本ではインフレがいきなり降って湧いたような反応だ。インフレの原因は現金給付と脱炭素政策で、ロシアや円安ではない。だが素人にこれを説明するのもそろそろ疲れてきた。彼らは大手メディアの出鱈目をそのまま信じてしまう。

筆者はコモディティ価格高騰を予想し各種資源や農作物などのコモディティの買いを奨めてきた。原油価格は次のように推移している。

インフレと資源国通貨

このコモディティ高を見ていれば、経験ある投資家は次のように考えるかもしれない。コモディティ価格が上がるならば、コモディティ輸出国の通貨も資金が流入するのではないか?

実際、ロシアの通貨ルーブルが上がっている理由はロシアが資源大国だからである。その資源の価格を西側の対露制裁が高騰させてくれるのだから、ロシアにとっては有難いことである。

ロシアの状況はウクライナ情勢のために少し特殊である。だが他の資源国はどうだろうか?

例えば資源国通貨と言えばまず思いつくのは豪ドルだろう。オーストラリアは鉄鉱石や石炭、金などを輸出している。

もう1つはカナダドルであり、カナダは天然ガスや原油、木材や貴金属などを輸出しており、世界有数の輸出大国である。

Bridgewaterのレイ・ダリオ氏はインフレについて次のように言った。

われわれが消費をできるかどうかはわれわれが生産できるかどうかに掛かっているのであり、政府から送られてくる紙幣の量に掛かっているではない。

紙幣は食べられない。

インフレが紙幣が紙切れになることを意味するなら、紙幣ではなく実際に使える現物資産を持っている国の経済はインフレに強いはずである。

株安と資源国通貨

だが1つ問題がある。2022年はアメリカの金融引き締めで株価が暴落する年だということである。

したがって豪ドルやカナダドルに投資するためには、株安と資源国通貨にはどういう関係があるかを考える必要がある。

そこでこれまでの株価暴落、2020年のコロナ株安と2018年の世界同時株安時にそれぞれの通貨がどうなったかを見てみたい。

まずは2020年前半の豪ドル米ドルチャート(下方向が豪ドル安)である。

株安に合わせて下がっている。

今と同じようにアメリカの金融引き締めで世界同時株安となった2018年も、同じく豪ドルの下落相場となっている。

カナダドルについても同じように見てゆくが同様である。まずは2020年前半のチャートである。

次に2018年のチャートである。

結論

ということで、資源国通貨は残念ながら株安局面では真価を発揮できない。これは第一にコモディティ相場自体の株安局面での値動きに関係がある。

株価が暴落すれば一旦デフレになるが、その後中央銀行が金融引き締めを緩め、それが今のインフレよりも深刻なインフレ第2波に繋がる局面が来る。

その時は資源国通貨を買うべきだろう。その時には暗号通貨も買いになるだろうが、いずれにしても今ではないと言うことはできそうだ。