Fomento de Construcciones y Contratas (MB:FCC)
概要
Fomento de Construcciones y Contratasはスペインの大手建設会社である。スペインの建設株は、住宅バブル崩壊以降、最高値の数分の一の株価まで暴落しており、現在の欧州における反緊縮財政の動きが業績反転の契機となれば、歴史的な買い場となるだろう。ちなみに本銘柄には、ジョージ・ソロス氏やビル・ゲイツ氏が業績回復を見越して大口の投資をしたことが報じられている。
指標・想定値
一株当たり売上高: €52.8
想定底値: €10.6 (業績回復時の利益率を5%とした場合のP/E 4)
スペインにおける住宅の需給
スペインでは住宅バブル崩壊以降、住宅価格の下落が続いており、不動産需要が回復していないことを示している。住宅の買い手である家計の側では、賃金上昇率が停滞しており、需要を押し上げることができない。
失業率は高く、建設業のみならず経済全体の需要を悪化させている。
また、不況で移民が帰国したことで人口減少が生じており、これも住宅の需要減少の一因であると考えられている。政府はこの需給ギャップ拡大を変えようとしており、一つの有力な手段として公共事業による雇用創出が挙げられる。建設株はもっとも恩恵を受けるセクターであると言えよう。
住宅市場の不調に応じて、本銘柄の株価も最高値の€80から大きく下がり、€16前後で推移している。P/S(株価売上高比率)は現時点で0.3程度であり、利益は現在赤字に転落しているが、経営が好転した場合に利益率が5%程度に戻ると想定すれば、現在の株価と売上高で計算して、P/Eが6前後で取引されていることになる。
政治動向
上記のように経済は依然回復しておらず、財政・金融の両面からの景気刺激が求められている。EUから課された緊縮財政への国民の不満が高まっており、ラホイ首相は欧州議会選挙のあと63億ユーロの雇用創出案と法人税の引き下げ(30%->25%)を発表した。
金融緩和
この銘柄は勿論、ECB(欧州中央銀行)が緩和を行った場合に恩恵を受ける銘柄である。デフレそのものには効果の薄い利下げも、建築セクターには良い方向に作用するだろう。ただし、マイナス金利が住宅ローンにどう影響するかは未知の部分があり、注意が必要となる。
投資家の動向
また、この銘柄は、ビル・ゲイツ氏とジョージ・ソロス氏が株式を取得したことが報じられている。ゲイツ氏は発行済み株式の6%を€14.87で、ソロス氏の買値は明らかになっていないが、株式が€16前後で取引されていた1月に、3.1%を取得したと報じられた。
リスクシナリオ
この銘柄への投資は、EUが南欧諸国に雇用の拡大を許しながら、いずれの国をも離脱させずに円満に改革を成功させることに賭けるということであり、EU諸国の協調が失敗した場合、諸々のリスクが生じることになる。例えば、ドイツがスペインの財政支出の拡大を許さず、かつECB(欧州中央銀行)が大規模な金融緩和をしなかった場合、スペインは深刻なデフレに陥り、同銘柄は想定底値に向けて再び下落する可能性がある。ユーロ圏やEUそのものが崩壊した場合には、状況の仔細によってより大きなリスクが生じることになるだろう。主導権を握るドイツがこの状況をどう切り抜け、欧州の国家間協調を導いてゆくのかを注視しながら、適切な株価でポジションを適宜取ってゆきたい。