さて、上記に紹介したジム・ロジャーズ氏のインタビュー(原文英語)のうち、世界同時株安に関する部分は訳したが、金の予想に関する部分はまだであったので、そちらも紹介しておきたい。
先ず金である。金についてはここでも何度も分析記事を書いており、個人的にも金の買い場を長らく待っていたが、年末に2016年の金価格の推移予想を書き、その記事ではついに金の買い入れを開始したことを表明した。
金はその後の世界同時株安を受け、やや強含んだ動きを見せている。これはコモディティ市場全体が暴落していることを考えれば、相対的にはかなり強い動きである。
ジム・ロジャーズ氏はこの動きが金価格の底入れを示すものかどうかと聞かれ、次のように答えている。
何度も言うように、わたしはタイミングを見計らうことに関しては世界で誰よりも下手な、世界最悪の短期トレーダーなのだ。だからわたしに聞くのは時間の無駄だ。個人的には金が底を打ったとは思っていない。
以前から表明している通りに、今でも1,000ドル以下の底値を想定している。そこまで落ちるかは分からないが、もし落ちたならば、大量の金を買いに行けるだけの賢明さが自分にあることを祈りたい。いつになるかは分からないが、金は最終的にはバブルになる。ただ、自分はまだ買っていない。
米国が金融緩和に逆戻りすれば金が暴騰することは、ずっと前からここでも書いている通りである。しかし金はまだ下がるだろうか? ロジャーズ氏の答えはイエスであり、世界同時株安のあともその意見は変えていないようだ。
個人的には米国の長期金利と金利先物市場を見てその可能性はあまり高くないと判断し、迷った末に買い入れをついに開始した。詳細な分析は以下の記事を参照してほしい。
しかし下落がないと考えているわけではない。下落した場合に買い下がれるように余力を残してある。金の底値は米国の利上げが何処まで進むか次第だが、世界同時株安を受け、市場は米国が利上げを強行できないとの見方に傾きつつある。これも記事にしておいた。
ではロジャーズ氏の見方はどうか? 彼はこう述べている。
私の予想は、市場の混乱が更に広がり、より多くの人々がドルに資金を逃避させるようになる。わたしはドルを大量に保有している。ドルがそうして上がることで人々はドルを安全通貨だと考えるようになるだろう。あなたも知っての通りドルは安全通貨などではないのだが、多くの人はそう考える。
そうすればドルは更に上がり、過大評価されるようになる。バブルになるかもしれない。そのような時には金は下落する。ドルが上がるときには大抵、いつもではないが、金価格は下がる。そうなればわたしはドルを売り、何か別のもの、恐らくは金を買うことになるだろう。
市場がリスクオフになればドルが上がるという考え方には少し異論がある。例えば対円では世界同時株安でドルは下落している。資源国や新興国の通貨に対しては上昇しているので、一概に間違いとは言えないが、ユーロに対しても微妙な動きとなっており、ドルが最良の選択肢であるとは言えないのではないか。また、先に書いたように金は世界同時株安でやや上昇している。
少し話は逸れるが、世界同時株安でドル円が下がり、株安が米国の利上げを妨げるにも拘わらずそこまで金が上がっていないならば、ここで再び薦めたいのは円建ての金買いである。
世界同時株安による円高を受けて、ドル建てで既に購入している金とは別枠で、少量だが円売り・金買い(つまり円建ての金買い)のポジションを新たに作った。このポジションは、リスクオフのときには円が上がって損が出る代わりに金は上がり、リスクオンのときには円が下がって利益が出る代わりに金は下がるため、市場の短期的な混乱に影響を受けずに長期的な円安、金高に賭けることができるポジションとなっており、個人的にはかなり満足している。
ただ、2016年の市場ではリスクオフの円高は甘く見るべきではなく、株安で極端に円高に振れた場合に少しだけポジションを取るのが良いだろう。ポジション一つ取るにしても普段以上に気を遣う難しい相場である。