4月26日に最新のアメリカのケース・シラー住宅価格指数が発表され、2月の住宅価格は前年同月比で19.8%の上昇となった。ほとんど20%の住宅価格高騰である。
アメリカのインフレ
アメリカやヨーロッパではインフレが家計にとって深刻な問題となっており、アメリカでは物価全体でも8.6%のインフレとなっている。
しかし物価上昇の中でも特に深刻なのが住宅価格の上昇である。何故ならば、住宅価格が上昇すればそれは時間差で家賃が上昇することを意味するからである。
その住宅価格は現在ほとんど20%に近い上昇率で上昇している。上昇率のチャートは以下の通りである。
年末にアメリカでコロナが蔓延していた時期には一時鈍化していたのだが、そこから綺麗な曲線を描いて上昇に転じているのが分かる。
アメリカの住宅バブル
この20%近いインフレは非常に深刻である。例えばリーマンショックを引き起こした2007年までの住宅バブルでさえ、上昇率は最大でも15%に満たなかった。
現在の住宅バブルは当時のバブルを軽く超える水準である。そしてそれはバブルという市場の歪みの問題だけではなく、アメリカの家計にとっては家賃が時間差でそれだけ上昇するということでもある。
アメリカ人の立場になって考えてもらいたいのだが、明らかに想定される家賃の上昇を避けるために何が出来るだろうか。
お金のある家庭は明らかに住宅の購入を検討するだろう。住宅価格が上がっているから住宅を買う、というバブルの典型的な形だが、株が上がっているから買う、という下心丸出しの個人投資家とは違い、彼らには家賃の高騰を避ける他の方法がない。
ではお金のない家庭はどうするか? 当然住宅ローンを健闘するだろう。そして住宅ローンの金利はFed(連邦準備制度)の「2%程度まで利上げする」という緩和的な金融政策によって低く抑えられている。
何故2%への利上げが緩和的かと言えば、住宅価格が20%近い勢いで上がっているからである。
ローンを借りるためには金利を払わなければならないが、3%や4%のローン金利を払ったところで、ローンで買った住宅の価値が20%の上昇を続けるならばその金利は十分以上に元が取れてしまう。
住宅価格の上昇率とアメリカの長期金利を並べると次のようになる。
株式市場が大騒ぎしている今の金利上昇など笑い話にもならないのがすぐに分かるだろう。
結論
この「緩和的」金融政策こそがこの物価高騰時代に中央銀行がやっていることである。彼らはインフレの元凶である。
はっきり言うが、今のインフレはこれからのインフレに比べればインフレですらない。物価高騰はこれから本当に酷くなってゆく。
「インフレは善」という何の根拠もない完全なでたらめを人々はどうして信じたのだろうか。
日本の首相はインフレ対策で金をばらまくそうだが、もう爆笑するしかない。あの馬鹿を止めないと日本経済は本当に酷いことになるが、いまだにインフレの原因さえ知らず、それをロシアのせいだと思っている多くの人々には何を言っても無駄だろう。彼らには物価高騰が似合っている。