2018年の世界同時株安でドル円が急落したタイミングを再確認する

世界的に株式市場がぐらついている。理由は当然ながらインフレ対策のためのアメリカの金融引き締めだが、株価が下がる一方でドルはまだ下がっていない。

一方、これまでも述べてきているように本格的なリスクオフになればドルも下落を免れないだろう。そこで今回は、同じく金融引き締めで株価が暴落した2018年の相場ではドル円がいつ下落に転じたのかを確認したい。

2018年世界同時株安

リーマンショック以降、量的緩和で債券などを買い入れてバランスシートを拡大し続けてきたアメリカの中央銀行は、2017年にバランスシートを縮小する量的引き締め政策を開始した。

当時も言ったように、量的緩和で株価が暴騰したならば、それを逆回しにする量的引き締めで株価が暴落しなければ理屈に合わない。

しかしタイミングについてはいつも難しいものである。2017年の量的引き締め開始時点では、筆者は次のような判断を下していた。

株式市場の純粋な低金利バブルが暴落する原因は金利の高騰だが、この原因はブラックマンデーやリーマンショックの頃とは違い、不可避のものではない。

この時点では株式市場はまだ詰んでいなかった。だから株価の下落はまだだろうと判断したのである。

しかし量的引き締めでいずれ株価が暴落するのは自然の摂理である。2018年7月、筆者はその時が近づいているという記事を書いている。

アメリカの中央銀行によって世界市場から資金が引き揚げられており、現在は新興国だけを襲っている金融引き締めも、現在の引き締め状況が続けば最後にはアメリカと日本を含む先進国まで回ってくることになる。

日本株は当然のこと、米国株まで含め、世界の株式市場は下落相場を経験するだろう。なかなか面白い相場がやってくると考えている。

この時点で中国株など新興国株は軒並み暴落していた。しかし米国株はまだ上昇を続けていた。

筆者は米国株の下落も近いと書いている。だがそれでも空売りを開始したわけではなかった。

タイミングというものは非常に難しいものである。筆者が実際に株式の空売りを開始したのは8月の末である。

個人的なポジションについて語れば、筆者は既に日経平均の空売りを始めている。

しかしどれだけ優れた投資家であってもバブル相場の天井を1日単位で当てることなど出来ない。その後も株価はじりじりと上昇を続け、筆者は空売りを増やし続けた。

そして空売り開始から1ヶ月後、量的引き締め政策はついに株式市場を崩壊させることになった。以下は当時の米国株のチャートである。

ドル円の下落タイミング

だが今回の記事のメインテーマは、この時点でまだドル円が暴落していなかったということである。

金融引き締め政策は株式にはマイナスだが、ドルにはプラスとなる。金利が上がればドルの魅力が増すからである。

しかし高過ぎる金利はいずれ株式市場を崩壊させ、リスクオフがドル円を襲うことになる。

当時、12月の記事に次のように書いてある。

筆者は日経平均とともにドル円も空売りしているが、こちらはまだ下落していない。

しかし株価の暴落を止める手段がアメリカの金融引き締めの停止および金融緩和だけであるとすれば、ドルが下落するのは必然であると言える。

結局、ドル円が下落に転じたのはその直後だった。以下が当時のドル円のチャートである。株価と見比べてみると下落タイミングの違いが分かりやすいだろう。

結論

アメリカのインフレでドルが上がっているのは奇妙なことである。何故ならば、インフレとはドル紙幣の価値の下落だからである。

何故ドルの価値が下落するはずのインフレでドル円は上がっているのか? その辺りについては以下の記事で説明している。

だが株式市場がリスクオフの衝撃に見舞われるとき、為替相場もインフレという言葉の意味を思い出すだろう。

しかしそのためには株式市場の下落が本格化する必要がある。今の米国株は以下のように推移している。

1970年代の物価高騰時代には株価は60%下落したのだから、この程度では下がったとも言えないだろう。

だからドルの下落にはもう少し時間が必要である。だがドルの頭が少し重くなったように思える動きも見られ始めている。その時は確実に近づいているのである。