世界的な物価高騰が止まらない。それでアメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は利上げと量的引き締めを断行するとしているが、それでインフレは収まると市場は思っているのだろうか?
金利上昇とインフレ
まず、金利は間違いなく上昇している。政策金利の利上げは始まったばかりだが、国債の金利は今後の利上げを織り込んで急上昇している。アメリカの長期金利のチャートは次のようになっている。
もはや3%に届きそうである。それでこれまで低金利に支えられていた株価が不安定化している。米国株のチャートは次のようになっている。
そして低金利が支えていたものは株価だけではない。住宅ローンや自動車ローンの金利を通して消費者の購買意欲も支えていた。
だから金利が「十分に」上がれば、市場はインフレ率が低下してゆくことを織り込むはずである。
市場の期待インフレ率
金融市場には期待インフレ率というものがある。インフレになるとその分を加算した金利を貰うことができるインフレヘッジ国債の金利を利用して市場のインフレ率の予想値を計算したものであり、これを見れば市場が今後のインフレをどう考えているかが分かる。
では市場の期待インフレ率はどうなっているのだろうか? これだけ金利が急上昇しているのだから期待インフレ率は下がっているだろうか。チャートを見てみよう。
上がり続けている。
これは10年物のインフレヘッジ国債から算出した期待インフレ率なので、今後10年のインフレ率の市場予想だが、金利上昇をものともせず上がり続けている。つまり、市場は利上げがインフレに効かないと考えているということである。
インフレが止まらない理由
何故か。その理由は単純である。長期金利とインフレ率を並べてみれば次のようになる。
要するに金利はインフレ率に比べてほとんど上がってすらいないのである。
結論
このような利上げでは現在8.6%となっているアメリカのインフレを止められるはずがない。
市場はそれを見透かしており、期待インフレ率は上がり続けている。
だがそれも長くは続かないかもしれない。インフレを抑制する救世主がもうすぐ登場する。それは株価の暴落である。
インフレにはほとんど効いていない利上げも、株価には効いている。
そしてインフレが退治される前に株価が退治され、株価の暴落は時間差で実体経済にデフレをもたらすだろう。
これでようやく馬鹿げたインフレ政策がもたらしたインフレが解決される。それがインフレ主義者の望んだことである。
筆者は株の空売りで利益を上げさせてもらうが、量的緩和と現金給付を支持した馬鹿たちは存分にインフレと株安を楽しむと良いだろう。