株式市場に逆風が吹いている。原因は明らかにインフレ対策でアメリカが行なっている金融引き締め政策である。
一方、インフレとはドルの価値下落であるから、資金の逃避先になるゴールドや暗号通貨にはプラスとなるはずだが、株価下落はこれらの資産にどういう影響を及ぼすだろうか。それが今回のテーマである。
2022年スタグフレーション相場
2022年の相場は素人には難しい相場である。アメリカでは物価高騰が止まらない。
それで物価抑制のために中央銀行が利上げと量的引き締めという二重の金融引き締めを行おうとしている。
しかし実体経済はコロナで弱っており、インフレを退治する前に株価と経済成長が退治されてしまうことが懸念されている。
そこで、ここでは年始より株式の空売りと金属や農作物などのコモディティ銘柄の買いを推奨してきた。
景気後退ならば株が下がり、インフレならば金属や農作物の価格が上がるからである。
スタグフレーショントレードの展望
年始からここまで、このトレードは多大な利益を上げてきた。株価は下がり、しかもコモディティは軒並み上がっているからである。
だが株価の下落が本格化すればどうなるだろうか。それをこの記事では議論したいのである。
まず米国株のチャートを掲載しよう。
特に直近2日間では比較的大きな下落となっている。
この動きを受けて、例えばインフレ銘柄の代表格である金相場はどうなっているだろうか。チャートを掲載しよう。
株価ほどではないが下がっている。
株価と金価格の関係
もう一度指摘しておきたいが、これが普通の値動きである。
年始からここまで、株価が下落しているにもかかわらずコモディティ価格は軒並み上昇していた。それほど今のアメリカのインフレが凄まじいということだが、本来は株価が下落すればコモディティ価格も下落する。
安全通貨と言われているゴールドも例外ではない。例えばリーマンショックが起きた2008年における金価格は株価暴落に引っ張られて30%の下落を経験している。
当時の金価格については以下の記事でまとめている。
株価が下落すれば景気後退とデフレを市場は織り込むだろう。だから株価暴落が本格化してくればコモディティ価格も悪影響を受けざるを得ない。
スタグフレーショントレードの本領
しかし筆者の投資テーマは「金融引き締めはインフレよりも先に株価と経済成長を殺す」というものである。これについては前回の記事で説明した。
金融引き締めは株価にも実体経済にも影響を与えるが、反応が早いのは株価の方である。
この仮定が正しければ、株価(経済成長)も金価格(インフレ)も同時に下落するが、下落幅は株価の方が大きい、ということになる。
だから株価を空売りし、ゴールドを買うと、差額で利益が出ることになる。
元々、年始の記事の狙いはそういうものだった。4月までの相場ではポジションの両側で儲かり、恵まれすぎていたと言うべきだろう。だからスタグフレーショントレードにとってはここからが本番である。
暗号通貨はどうなる?
さて、もう1つ言及しておきたいのは暗号通貨である。
暗号通貨はウクライナ情勢でアメリカがドル保有者に制裁を加え始めたことで、ロシアは言うまでもなく、NATOの対ロシア戦争に巻き込まれたくないインドやハンガリーなどにとってもドル関係の制裁を回避するために手段として一躍魅力的になった。
だが本来、リスクオフの局面は暗号通貨にとって厳しいものである。だから筆者は現在暗号通貨を買い持ちにはしていない。
だが比較対象としてここで挙げておこう。ビットコインのチャートは次のようになっている。
米国株と比較してどうだろうか。興味深いことに耐えている。ゴールドほど好調ではないが、直近2日間の株安にあまり反応していないし、ウクライナ以後のパフォーマンスは株式より良いものとなっている。
結論
筆者はそれでも今は暗号通貨を買い持ちにはしないつもりである。株の空売りと組み合わせるならばやはりゴールドの方が良い。
一方で、暗号通貨が思ったより耐えているのも事実であり、それは明らかにドル紙幣からの逃避が関係しているだろう。
ただ、ゴールドもそうだがこうした銘柄が本領を発揮するのは、株価が暴落した後に中央銀行が金融引き締めの手を緩める時だろう。
その時には暗号通貨の買い持ちを検討したい。その時にはインフレと緩和が両方来るからである。
それまではどうなるだろうか。もしかしたら案外健闘するのかもしれないが、筆者は株価が暴落するまでは年始の記事通り暗号通貨なしのポートフォリオで満足するつもりである。