世界同時株安で米国利上げはどうなる?: 市場急落で金利先物市場の利上げ織り込み回数が減少

報じているように、年初より株式市場が荒れているが、投資家にはS&P 500や日経平均の数字よりも注目すべきものがある。フェデラルファンド金利先物市場に織り込まれている米国利上げの回数である。

2015年12月に既に行われた1回の利上げを含め、米国の中央銀行であるFed(連邦準備制度)は2016年末までに4回の利上げを予定しているが、市場はそれをどれだけ信じているだろうか? 市場急落前の12月の数字も含め、市場の織り込みがどう変わったかを見てゆきたい。

12月には4回の利上げを織り込み

金利先物市場については12月26日の金価格に関する記事で一度言及している。

この時点では株式市場はまだ急落しておらず、金利先物市場は2016年末における政策金利を以下のように予想していた。(金利: 確率)

  • 0.75%: 24.3%
  • 1.00%: 32.3%
  • 1.25%: 23.1%

一番確率が高いと見積もられていたのが1.00%であり、一度の利上げを0.25%とすると、これは0%から4度の利上げを織り込んでいたことになる。この回数はFedの主張と一致しており、市場は中央銀行を信じていたことになる。

株式市場急落後の織り込み

しかしながら、株式市場が急落し、この織り込みに変化があった。以下はS&P 500のチャートである。

2016-1-18-s-and-p-500-chart

この動きを受け、1月18日時点で、市場では2016年末の米国政策金利は以下のように予想されている。

  • 0.50%: 33.9%
  • 0.75%: 40.2%
  • 1.00%: 19.8%
  • 1.25%: 5.2%

一番確率の高い金利が0.75%となり、3回の利上げが織り込まれていることになる。しかも次に確率の高いのが0.50%となっており、市場の急落が更に続けばこれらの数字が逆転し、2回の利上げを見込む声が優勢となるかもしれない。

米国利上げはどうなる?

これらの動きを受け、ヘッジファンドマネージャーたちは米国の利上げについて様々な憶測を立てている。

米バロンズ誌が毎年主催するいわゆる円卓会議(Roundtable、原文英語)において、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガントラック氏は「Fedは今年前半にもう一度だけ利上げしたあと緩和に逆戻りすると予想する」と述べた。ジム・ロジャーズ氏は急落前の昨年末、利上げが3度か4度来れば株式市場は終わりだと予想していた。

わたしも急落前から利上げは4度が限度だと主張してきた。利上げの回数は勿論、市場の急落の度合いによるため、市場が下がれば利上げは難しく、反発すれば容易になるが、しかし年始からの急落後も個人的にはガントラック氏ほどハト派ではない。第一に、これほど早く利下げに転換してしまってはむしろFedは市場の信頼を失う。そして第二に、Fedは利上げ継続を強く望んでいる。理由は以前説明した通りである。

しかしいずれにせよ、今年初めてのFOMC会合でFedがどう反応するかを見れば、より精度の高い推測が可能になるだろう。1月のFOMC会合の日程は米国時間で1月26-27日である。

金の先行きはどうなるか?

Fedの動きは金価格の見通しを気にしている投資家には非常に重要である。Fedが緩和に逆戻りすれば金は暴騰する。量的緩和まで逆戻りすれば、金の価格は2倍を見込める。しかしFedがある程度の期間利上げを続ければ、短期的には下落するかもしれない。しかしいずれにせよ、2016年の金融市場で一番重要なテーマは、金をいつ買うべきかである。

株式市場の急落については慌てる必要はないし、慌てなければならないようであれば、その投資家のポートフォリオは間違っているということである。不安な投資家は以下の記事を読んでもらいたい。