引き続きCNBCによるDoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のインタビューである。彼はドルが下落すると予想し、そのタイミングまで指摘しているので紹介したい。
ガンドラック氏のドル下落予想
ガンドラック氏はかねてよりドルはいずれ下落すると予想している。
インタビューではその理由を聞かれて改めて次のように答えている。
双子の赤字だ。アメリカの財政赤字は当たり前のように史上最大の水準で、貿易赤字はアメリカ人が現金給付を使って外国製の商品を買い漁ったことで急増した。
財政赤字は当然ながらコロナ後の現金給付などの財政政策によって増加した。つまり国の借金が大幅に増えたということだ。
逆に株式はそのために上昇した。(一方でもう現金給付がないということが株式の今後の運命を決めている。)
そして財政赤字を拡大させた現金給付は、ガンドラック氏によれば貿易赤字をも拡大させている。
彼はコロナ後にアメリカで緩和措置が行われたとき、その緩和はアメリカよりもむしろ中国の利益になっていると主張していた。
アメリカは商品を大量に中国から輸入しているので、アメリカ人が現金を渡された時に購入する商品は少なからず中国のものである。
資金流出するアメリカ
こうした事実はアメリカから資金が流出していることを意味している。ガンドラック氏は次のように主張する。
ドルの下落は、これらの赤字が制御不能になっていることと密接に関係している。
だが今のところドルの暴落という事態は起こっていない。これについてはここでも何度か説明しているが、ガンドラック氏は次のように説明している。
だが短期的には長短金利が縮まっていることはドルを支えている。
実は今ドルを買っている。今ドルを売っては駄目だ。ドルの売りは4年か5年単位の長期の話だ。
ここの読者には周知の通りだが、今金融市場では金利が上がっている。
特に上がっているのが政策金利に連動する2年物国債などの短期債であり、10年物以上の長期債の金利はそれほど上がっていない。
結果として長短の金利差が縮まっており、一時金利差はマイナスになった。
これは、本来10年投資しなければ得られない高金利(年率)が2年で得られることを意味する。金利高がドル高に繋がっているのは当たり前なのだが、一方で市場はこの金利高がインフレによるものだということを忘れている。
利上げはインフレを抑制するために行われている。そしてインフレは紙幣をばら撒き過ぎたので紙幣の価値が下がっているということである。
市場は高金利に目をやるあまり、国内ではドルの価値が既に年率8.6%で下落しているという事実を忘れている。
ドル下落へ
だがこれは金融市場では平常運転なのである。インフレ期にはまずインフレ率が上がるがドル相場は下がらない時期があり、その後にドル相場はインフレに従って下落する。詳細は以下の記事を参考にしてもらいたい。
しかし下落はいずれ来る。だから筆者や著名投資家らはドルの下落のタイミングがいつかを考えているのである。
それはいつだろうか? 今回、ガンドラック氏はタイミングについても言及している。
ドルの下落は、具体的には次の景気後退時に起こるだろう。2023年までは起こらない。
つまり今年は起こらないとガンドラック氏は予想する。
思い出されるのは、ガンドラック氏と同じく債券のプロフェッショナルであるスコット・マイナード氏の景気後退予想である。
長短金利が逆転したこと、そしてもう一度逆転する可能性があることは、基本的に今後18ヶ月から2年の間に景気後退があるサインだということになる。
だから来年前後だというのがガンドラック氏の見方になる。
結論
一方で筆者のドルの天井予想はもう少し早い。景気後退時ではなく、その少し前に起きる株価暴落時が市場がドルに悲観的になるタイミングだと考えている。そしてその時は刻一刻と近づいている。
だから今年中のドル暴落開始も有り得るだろう。他の識者のドル相場予想も参考にしながら、読者にも考えてもらいたい。