DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューでアメリカで高騰している物価について語っている。
アメリカのインフレ見通し
現在、アメリカのインフレ率は8.6%まで上がっている。
ガンドラック氏はコロナ初期からインフレを警告し続けた著名投資家の1人であり、インフレを放置し続けた政府や中央銀行を批判してきた。
一方で2021年のインフレの一時的な足踏みを予想するなどインフレの細かな動きについても当てている。
そのガンドラック氏が今のインフレ率について語っている。
エネルギー価格が更に上がることがなければ、インフレはピークに近いだろう。
前年比の統計効果がそれを助けている。2021年の半ばにインフレ率は前月比で大きく上昇したが、同じことは今年には起こりそうにない。
これは少し説明が必要だろう。8.6%という今のインフレ率は前年同月比のものだが、これはつまり今年の3月と去年の3月を比べている。
だから仮に去年の3月が特殊要因によって高い数字だった場合、そこからどれだけ上がったかを考える前年同月比のインフレ率は低く出てしまうということになる。
前年同月比の統計効果
さて、では比較対象となる2021年のインフレ率はどうなっているか。これまでのインフレ率(前年同月比)のチャートは以下の通りである。
現在のインフレ率の比較対象となった2021年3月は、アメリカで最後の現金給付が行われた月である。余計なことを言えば、完全に必要なかった現金給付である。だから4月以降インフレ率が急激に上がっている。
これはつまり、今後発表される4月以降のインフレ率は、高騰した後の2021年のインフレ率と比較されてゆくことになる。これがガンドラック氏が「インフレはピーク」と言う理由である。
彼はこう続ける。
だから恐らくこの辺りがピークだろう。だがインフレは長引く。許容できない水準で高止まりするだろうし、中央銀行が2%がどうとか言っているのは笑い事に過ぎない。魔法の杖でも使うのだろうか。
結論
ガンドラック氏の指摘は今後のインフレ率を考える上で重要である。インフレ2年目以降は前年の高い物価よりも高くならなければインフレは継続しない。
一方で、ガンドラック氏は「エネルギー価格が上がらなければ」という条件も付けた。何故ならば、ウクライナ情勢による原油価格や小麦価格の高騰などは、それを原材料とする製品価格に完全には転嫁されていないからである。
金融市場で高騰した原油や小麦の価格は、数ヶ月をかけて製品価格に転嫁されてゆく。それはこれからである。原油価格はまた上昇を開始している。
前年同月比の統計効果を差し引いてもやはりインフレ率は高い水準が続きそうであり、そして統計上の仕組みによる数字の上下は、人々の実生活がインフレで害されてゆくこととは関係がない。
食料の貯蓄は十分だろうか? 物価高騰はもう投資がどうとか言っていられる水準を越えているのであり、それは現金給付と脱炭素政策と対ロシア戦争とそれを支持した愚かな人々が原因なのである。