マイナード氏: 米国株は金融引き締めで下落する前にまだ上がる

債券の専門家だが株式にもたまに優れた神通力を発揮するGuggenheim Partnersのスコット・マイナード氏が、CNBCのインタビューで株価はまだ上がると主張しているので紹介したい。

株価の動向

今の金融市場が楽観的か悲観的かを言うのは難しい。Fed(連邦準備制度)の利上げと量的引き締めが迫っているのに、まだ史上最高値からそれほど遠くない位置にいるのは楽観的とも言える。

一方で、2年物国債の金利が10年物国債の金利を上回る長短金利の逆転が起きたことは、債券市場の明らかな悲観を物語っていると言って良いだろう。

長短金利逆転はかなり優秀な景気後退の予想指標であり、過去何十年かの間の予想成功率は100%である。

そうした状況を受け、米国株は少なくとも上昇トレンドを止めて足踏みを続けている。S&P 500のチャートは次のようになっている。

マイナード氏の相場観

この状況をどう見るだろうか。マイナード氏は次のように語っている。

長短金利が逆転したこと、そしてもう一度逆転する可能性があることは、基本的に今後18ヶ月から2年の間に景気後退があるサインだということになる。

例えばリーマンショックの時は、長短金利逆転が2006年2月、景気後退入りが2007年12月だから、2年弱の猶予期間がある。

株価暴落は景気後退の前に起こる場合が多く、リーマンショックの天井は2007年10月だが、それでも長短金利逆転から1年半後である。

これがマイナード氏の根拠である。「まだいける」ということだろう。

長短金利逆転後に買えるもの

では何を買えば良いのか? マイナード氏は次のように語っている。

景気後退に突入してゆく時、投資家はどういう資産クラスを考えることが出来るだろうか?

景気後退の前年にはコモディティが最高のパフォーマンスを上げると期待できる。だが歴史的にはS&P 500は7%から8%上昇しているし、景気後退の直前にはリスクの低い債券や国債などが値上がりする。

筆者も保有している貴金属や農作物などのコモディティは、ウクライナ情勢もあって高騰している。

Bridgewaterのレイ・ダリオ氏の予想するようにこれから戦争状態が続くのであれば、ドルや有価証券など政府によって管理され、政府によって取り上げられる可能性のある資産クラスよりは、貴金属や宝石などの現物資産の魅力がますます高まってゆくだろう。

結論

マイナード氏は次のように言う。

だから今は悲観的になる時ではない。債券市場にも株式市場にも注目すべき投資機会がある。

経済には多くの不確実性があるとはいえ、これから1年か2年のスパンで投資を考えるならば、今は恐らく買い時だということを歴史は示している。

だが一方で、インフレを引き起こした現金給付などのその場しのぎの政策で誤魔化してはいるが、今の世界経済は過去に前例がないほど傷んでいる。

その証拠に、まだ2年あるとするマイナード氏の意見と反対の指標として、株価に影響する長期金利の水準などは既に危険水準に近づいている。

株価は今後どうなるだろうか。いずれにしても最終的には景気後退になり株価は下落するというのはマイナード氏も予想していることである。下落までのチキンレースに参加する必要はないというのが筆者の意見である。