著名投資家のジム・ロジャーズ氏がブルームバーグのインタビュー(英語)に答えている。米国の利上げが行われた後、2016年の金融市場がどうなってゆくのかについて興味深い話をしているので取り上げたい。個人的には同意する部分もやや異議のある部分もあるが、それも含めて見てゆこう。
利上げは株式市場の終わり
先ず、利上げについてはこう答えている。
一度目の利上げは大した意味を持たないが、三度目の利上げからは心配しなければならなくなるだろう。三度か四度利上げが行われれば、通常株式市場は終わりだ。心配と覚悟をしながら今後の動向を見守ることだ。
これまで書いてきた通り、わたしも四度目あたりが危ういと踏んでいる。四度目には政策金利が1%になる。これは実体経済に影響を及ぼす水準であり、また社債なども無事では居られないだろう。また、彼は利上げ後の投資方針についても語っている。
三度目の利上げが来れば、わたしは世界中で株を売るだろう。米国のジャンク債は既に売った。他の債券もその時には大量に空売りすることになる。
ジム・ロジャーズ氏は以前より米国のジャンク債の空売りを公言していた。その結果については、報じた通りである。
原油の底値
暴落している原油価格については、底値を尋ねられてこう答えている。
32ドルか30ドル辺りだろうか? 分からない。わたしは底値をはっきり言い当てられるほど優れたトレーダーではない。エネルギー企業の倒産のようなものが起これば、30ドル以下まで下がるかもしれない。
優れたトレーダーではない、というのは、短期予測を専門としていないという意味である。彼は長期投資家であり、また以前のパートナーであったジョージ・ソロス氏も「彼は良いアナリストだが良い投資家ではない」との評を残している。
個人的には「倒産のようなものが起これば」という表現が面白く感じた。シェール産業の倒産が起こらなければ原油価格がどうやって上がるというのか? 30ドル台の原油価格でOPECが減産を始めるとでも言うのだろうか? 以下の記事に書いたように、個人的には倒産さえも直接的な反発原因にはならず、そこから徐々に生産量が減ってゆくと踏んでいる。
しかし、これは恐らく彼が原油市場でポジションを持っていないからだろう。より注目すべきは金に関する見解である。
金と銀はいつ買うべきか?
金については彼は随分前から暴騰すると主張していた。個人的にも同意する。しかし投資家にとっての問題は、いつ買えば良いかである。彼はこう語る。
金と銀の保有分についてはヘッジしてある。金は1,000ドルを下回ってくると予想している。銀は12ドルか、10ドルくらいだろうか。銀についてはまだはっきりとは予測できていない。
しかし金が1,000ドルを下回れば、ヘッジを外して大量に金を買いに行くだけの賢明さが自分にあると信じたい。
ヘッジと書いてあるのは、恐らく現物の持ち分が多いからだろう。彼は金の像や銀食器などを大量に保有しているから、そのことを指しているのだと思う。
金が1,000ドルを下回るというのは、半年ほど前の記事でわたしが書いたことと一致している。しかし最近の記事では、下がらなくとも買わなければならないとも主張してきた。
結局、利上げのあと金がそれほど下がらなかったことで、個人的には遂に金の買い入れを開始した。来年1年間にわたって徐々に買い入れてゆくうちの最初の買い入れであり、ポジションを一気に取ったわけではないが、数年来初めての金のポジションとなる。
ジム・ロジャーズ氏がわたしより金の短期的な動向に弱気なのは、彼がドルに短期的に強気だからである。ドルが上がればドル建てで取引されている金は下がる。わたしはドルを保有しているが、それほどドルに強気ではない。一部は既にポンドと金に移行した。彼のドルに関する見解を見てみよう。
ここ2、3年ほど、わたしの最大の買い持ちは米ドルである。米国は負債が多く、ドルは健全ではないが、2016年の市場が荒れるだろうことを考えれば、人々がドルを安全資産だと考えていることに注目すべきだ。
わたしの予想では、市場の混乱はより酷くなり、今でさえ過大評価されているドルはバブルになるだろう。
しかし市場が荒れればドルは果たして買われるだろうか? ここが彼とわたしの最大の見解の相違である。リスクオフ時に買われるのはドルではなく円とユーロではないか?
投資家は金利の低い円とユーロで資金を調達して株式などに投資をしているのだから、リスクオフで買い戻されるのはドルではなく、調達通貨である円とユーロのはずであり、ここ1年ほどもそうだったはずである。読者はどう思われるだろうか?
ドルに対する相場観が、金を買うタイミングや、為替相場でのポジションを決めることになるだろう。わたしの見解は以下に述べた。そろそろ2016年の相場について、覚悟を決めるべき時である。