引き続きCNBCによるDoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のインタビューである。今回はガンドラック氏が株式市場の先行きを予想した部分を取り上げたい。
株式市場の見通し
2022年の相場はこれまで株安・コモディティ高が続いている。表向きにはロシアのウクライナ侵攻、本当のところはアメリカの利上げが重しとなって株価は下がり、インフレの更なる悪化を織り込んでエネルギー資源や農作物などのコモディティ価格が上がっている。
こうした状況を受けてガンドラック氏は今の相場をこう分析している。
株式市場はかなり売られ過ぎで、コモディティはかなり買われ過ぎだと思う。だからFOMC会合に向けて相場が比較的落ち着いてきていたのも驚きではない。
アメリカの中央銀行Fed(連邦準備制度)は金融政策決定会合であるFOMC会合でコロナ後初めての利上げを決定した。
だがこれまで売られていた株式は会合の前後にむしろ反発している。米国株のチャートを掲載しよう。
少し反発している。今後の動きはどうなるだろうか? ガンドラック氏は次のように続ける。
だから売られ過ぎの解消はこのまま続くだろうし、株価は上がるだろう。次のFOMC会合までは恐らくそうなると思う。
ガンドラック氏は株価上昇を予想している。しかし次のFOMC会合は5月4日であり、それまでの比較的短期的な値動きについてである。
株価上昇の理由
ガンドラック氏は理由として次のことを挙げる。
元々可能性は低いと思っていたが、市場の恐れていた0.5%の利上げはなかったし、バランスシート縮小に関する明確な言及も一切なかった。
特にバランスシート縮小、つまり量的緩和を逆回しにする量的引き締め開始の時期についてパウエル議長が何も言わなかったことは市場にとって大きいだろう。
ガンドラック氏はここから短期的に株価が上昇すると読んだ上で、その市場の心理を次のように解説している。
市場はまだパーティが続いていることを喜んでいる。 Fedがインフレ対策で後手に回っていることを喜んでいる。
それは後で利上げを加速して先手に回らなければならなくなることを意味しているのだが、今のところ金利はまだ非常に緩和的だ。0.5%利上げもしなかったし、バランスシート縮小もしていない。
要するに今利上げを急がなければインフレがますます酷くなり、後で急激な金融引き締めをやらなければならなくなる。だがそれが明確化するまでは株価は上がりうるとガンドラック氏は言っているのである。
株価反発の後は
では5月初旬まで株価が上がり、その後はどうなるだろうか? ガンドラック氏は次のように続ける。
だがFedがもういくらか利上げすれば市場は反転するだろう。
結局、株式市場は金融引き締めには頭を垂れるしかないということである。
だがガンドラック氏によれば今回のパウエル氏の対応には評価できる点もあるという。
少なくともパウエル議長は2018年のようなオートパイロット的な利上げは繰り返さなかったように思う。対応にいくらか柔軟さを匂わせた。
ガンドラック氏が気にしているのは、2018年に世界同時株安を引き起こしたパウエル氏の連続利上げである。
当時の記事を読んでもらえば分かるが、パウエル氏は当時、何が何でも定期的に利上げを繰り返す姿勢を表明していた。株価が暴落した後もその姿勢を表明したため、当時空売りしていた筆者にはとても有難かったものである。その時の記事からパウエル氏のコメントを引用しておこう。
バランスシートの縮小は大した問題を起こしていない。
しかし当時株価は20%近く下落していた。パウエル氏の名言は「インフレは一時的」だけではないのである。
バブル崩壊の原因
一般的に言って、株価バブルが崩壊するのは投資家が株を売るしかない状況に追い込まれた時である。2018年にはパウエル氏が金融引き締めの姿勢を崩さなかったことで投資家は株式を投げ売りするしかなくなった。
逆に言えば、金融引き締めが原因の株価下落は金融引き締めを止めれば回復する。だからパウエル氏が「何が何でも」利上げする姿勢ではないというのは、ガンドラック氏の言うように重要なポイントである。
しかし今回は2018年とは違う要因がある。物価高騰である。
だからパウエル氏が引き締めをやりたくなくとも、引き締めなければ物価が無限に上がってゆくのである。
2018年の世界同時株安は結局パウエル氏が市場に降参したことで収束した。だが今回パウエル氏は撤回したくとも利上げを撤回できない。それが筆者が2022年の株価暴落の下落幅をほとんど無限だと思っている理由である。
結論
2022年の株価見通しはほとんど変えようがない。パウエル氏であっても誰であっても株価の命運を変えることは出来ないだろう。年始に書いた通りである。
むしろ変える方法を知っているならパウエル氏は教えてほしいはずだ。
だが短期的にはどうなるだろうか? ジム・ロジャーズ氏もガンドラック氏とほとんど同じ予想をしている。
正直、売り方にとっては短期的に株価が上がってくれるのは有難いことである。更に高値で空売りするチャンスだからである。