米国利上げ後の世界の金融市場チャート: 株式、債券、為替、原油、金

米国時間12月16日にFed(連邦準備制度)は遂に利上げを行った。量的緩和の縮小から停止、そして利上げへと、市場が荒れないよう十分に周知を徹底して行った金融引き締めであったが、世界の市場の反応はどうであったのか、チャートを見ながら振り返ってみたい。先ずは米国株、S&P 500からである。

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米国株は発表当日、ポジティブな反応を見せた。利上げ開始というこれまでの懸念材料が消化されたことで、悪材料出尽くしで上昇した。

しかしそれが続いたのは1日だけであり、そこからは2日連続で下げている。結果として非常に悪いチャートになった。わたしはチャートの形による予想を一切信じないし、これ以降の相場ではそもそも短期的な予測に意味はないが、それでも最近の市場の反応は病の兆候のように感じる。

そういえば、以前にチャート分析に関する自分の意見を書いたことがあった。マクロの話で退屈してきた読者には、こういうものもお勧めしたい。

為替相場の反応

為替はどうだったか? ユーロドルは割と素直に反応した。

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チャートでは12月3日のECBの緩和延長に失望してユーロが反発した部分が目立つが、利上げはその後であり、少しのドル高となった。

一方で、ドル円も当初は同じようにドル高で反応していたが、日銀が誤った政策調整のやり方をしたことで台無しになった。

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黒田総裁はあわよくば政策調整を追加緩和と市場が受け取ってくれるとでも期待していたのか? そうであれば愚策であり、そうでなければ軽率であった。

いずれにせよ、ECBの緩和延長への反応も含め、最近の市場の中銀への厳しい態度は、量的緩和の効果を投資家が信じなくなってきている証拠である。そして中銀が市場をコントロールできず、市場が自分の行きたい方向に行こうとするとき、今度は逆に中銀が市場に従わなければならなくなる。以下の記事で書いたように、それこそがブラックマンデーの日となるわけである。

原油

さて、注目の原油であるが、原油は為替よりも素直にドル高の原則に従い、安値を更新した。

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原油安はいつまで続き、何処まで行くのか? 第一の疑問には既に答えてある。原油の反発のタイミングを探るための鍵はジャンク債である。

そのジャンク債市場から悲鳴の第一声が聞こえたのだから、原油反発が近づいたと言っていい。では底値は何処か? 死に体の市場で投げ売りが行われたときにどれくらい下がるかということは誰にも分からないし、当てに行くべきではない。

しかし時期ははっきりし始めた。そして原油が反発するときには今度は中銀が悲鳴を上げるだろう。エネルギー価格が反発してインフレ率が上がれば、緩和が難しくなるからである。原油をトレードしていない投資家も、原油の動きには注目する必要がある。

さて、逆にトレードすべきもので一番重要なのは金である。ユーロや原油がドル高に動くなかで、金価格は相対的にそれほどドル高に動いていない。

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他の通貨よりもドルが強いということは、市場が2016年の利上げを意識しているということだが、一方で金が相対的に強いということは、米国が数年にわたって利上げを続けられるほど経済が強くないと市場が予想し始めているということである。市場がそれを確信するとき、金は暴騰することになる。

金をいつ買うべきかについては原則として以前に書いた記事と変わっていない。4月の記事だが、この記事には米国が何処まで利上げできるかについても書いてある。

しかし一つ付け足すとすれば、望む価格まで落ちてこなくとも、買うべきときには金を買わなければならないということである。金については遠からず別途記事を書くつもりである。

結論

今回の利上げはFedが徹底して周知につとめ、市場の予想通りの利上げとなったため、利上げの前後数日で市場が大きく動くということはなかった。しかし重要なのはこれからである。

不幸中の幸いは、利上げ後の株安に米国の長期金利が低下(債券価格は上昇)で反応していることだろう。株式と債券が同時に落ちない間は、本当の暴落はまだ来ない。しかしそれもどれだけ続くかというところである。

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