ジム・ロジャーズ氏: ウクライナ後に株価が上昇すれば最後の売り時に

引き続きStansberry Researchによるジム・ロジャーズ氏のインタビューである。今回はロシアのウクライナ侵攻と株式市場について話している部分を取り上げたい。

ウクライナ問題と株価の下落

株価はここのところ下がっている。米国株は以下のように推移している。

筆者は本当の原因は別にあると思っているが、市場は少なくとも短期的にはウクライナ問題に反応しているように見える。

ロジャーズ氏はいつものように短期トレードは下手だと断りながらも、今後の株式相場の展開について意見を表明している。

わたしは相場のタイミングに関しては上手くないが、現在のウクライナの問題は何らかの要因により次第に落ち着くだろう。

この問題はプーチンにとっても誰にとっても利益になっていない。

ロジャーズ氏はこれまでのインタビューで述べているようにウクライナ危機はNATOが始めたことだとする一方で、軍事侵攻をしたのはプーチン大統領にとっても悪手だったと考えているようだ。それが一番理性的な見方だろう。

一方でロジャーズ氏によればその事実は株式市場が次第に落ち着くという予想に繋がるという。彼は次のように続けている。

だからプーチンが対面を保てる何らかの方法を見つければ、危機は終わり、中央銀行が今のところそれほどタカ派ではないことを考えると、株価は大きく上がる可能性がある。そしてそれが最後の上げ相場になるだろう。

もしそうなれば、その最後の上げ相場で売ることが出来るほど賢明でありたいと思う。

現在の株価下落が本当にウクライナ問題によるものであるのかどうかは、その問題が落ち着いた時に判明する。

本当にウクライナが問題であるのなら、戦争が落ち着けば株価を妨げるものはないはずだ。株式市場は去年までの上昇相場に戻っていくだろう。

一方で金融引き締めなど別の要因が本当の問題なのであれば、ウクライナ問題がもし何らかの形で沈静化して、株価が一時的に上がったとしても、長期的にはこれまでの下落トレンドに収束してゆく。

株価下落の本当の原因

だから投資家は大手メディアが言うような「ウクライナ問題で株価下落」や「利益確定売り」など何の根拠もなく囁かれる株価下落の原因を信じてはいけないのである。原因を読み間違える投資家は間違いなく相場の次の動きを読み間違える。

一方で株式市場が一旦上昇した場合、ロジャーズ氏は彼らしい表現でその後の動きを予想している。

それはかなり大きな上げになる可能性もある。そうなれば人々は「何ということだ、株式市場を止めるものは何もない」と言い始める。それが上昇の終わりだ。

今のところ空売りはしていないが、もし株式市場に最後の上げ相場があれば、空売りを始めるだろう。

ロジャーズ氏は自他ともに認める「最悪の短期トレーダー」である。ジョージ・ソロス氏と設立した伝説のクォンタム・ファンドではアナリストを務め、ソロス氏がロジャーズ氏の分析をもとにトレーディングを担当していた。

しかしこの言い方はどうだろう。トレードの天才であるソロス氏を思い出させる。彼は著書『ソロスの錬金術』で次のように言っていた。

強気相場は小爆発にときおり見舞われながら続いていく。そうしているうちに、だれも小爆発を恐れなくなる。このときこそ、大暴落の条件が整ったときなのである。

天井とはつまり相場で買い方の勢力が売り方よりも圧倒的になった時、つまり「それ以上買い方が増えなくなった時」だからである。

この相場に最後に参加した人々、つまり投資信託などに誘われて何も知らずに株式市場に吸い込まれてきた人々は覚えておくと良いだろう。それは筆者のようなプロにとって圧倒的売り時である。

結論

ウクライナ問題以降、ロジャーズ氏は冴えている。他人の意見に左右されない論者の面目躍如といったところだろう。

一方で筆者はウクライナ問題の沈静化がそれほど株高に繋がらず、このまま下落相場が継続する可能性も視野に入れている。

どちらのシナリオになるとしても確実なのは、2022年の株式市場は金融引き締めにより詰んでいるということである。


ソロスの錬金術