ジム・ロジャーズ氏: 米国のウクライナ支援はロシアが米国直下のメキシコの反米を煽るようなもの

著名投資家の多くがロシアのウクライナ侵攻について語りたがらず、インタビューにも出ていない中、ジョージ・ソロス氏とともにクォンタム・ファンドを立ち上げたことで有名なジム・ロジャーズ氏がWall Street Silverのインタビューでウクライナ問題について語っている。

ロシアのウクライナ侵攻

これはウクライナ侵攻の直前に収録されたインタビューだが、ロジャーズ氏は状況を的確に予想していたようだ。彼は次のように述べている。

ワシントンは戦争を欲しているようだ。ワシントンの政治家は無能でどうしようもない。

ビクトリア・ヌーランドという名前の官僚の女性がウクライナにおける2014年のクーデターを支援し、今の反ロシアかつ親ビクトリア・ヌーランドのウクライナ政権を打ち立て、それが今まで尾を引いている。

そして彼女は今また争いを煽っているようだ。

そしてアメリカやEUがウクライナに反ロシア政権を据え、対ロシアの武器として使っていることに対しては、次のような例えを用いて説明している。

彼女がそうする理由はよく分からない。考えてみてほしいのだが、もしロシアがアメリカの真下にあるメキシコと軍事同盟を結んだりすれば、アメリカ人だって激怒するだろう。それがアメリカのやったことだ。

むしろロシア・メキシコ軍事同盟はアメリカのウクライナ関与に返答する良いジョークになったかもしれない。

バイデン氏は蚊帳の外

このインタビューは侵攻前のものであるにもかかわらず、ロジャーズ氏は事態をよく把握していたようだ。

ビクトリア・ヌーランドは戦争を望んでいるようで、他の人々を説得している。彼女はプロの官僚だ。

一方でプロの官僚、プロの政治家であるためには能力が欠如した人物も居る。ロジャーズ氏はその人物について語る。

バイデン氏は何も分かっていないだろう。彼はウクライナで大金を儲けているからウクライナが何処にあるかぐらいは知っているだろうが。

この発言はアメリカ人が世界地図を見て他国の場所を当てられないというよく知られたジョーク(かつ事実)に基づいている。一方で彼や彼の家族がウクライナで何をしていたかはあまりジョークではない。以下の記事で説明している。

この記事では2014年にウクライナで起こった反ロシア派のクーデターをアメリカとEUが支援した経緯までは解説したが、そもそもこの話はもっと過去に遡る話であり、インタビュワーはその辺りをまず説明している。

ベルリンの壁崩壊

話の始まりは1989年のベルリンの壁崩壊とそれに続く東西ドイツの統一である。

この時東ドイツは西ドイツに吸収される形で統一された。第2次世界大戦の結果、東ドイツを管理していたのはロシアだったが、ロシアが東西ドイツの統一を認めればNATOはそれ以上東に拡大することはないとアメリカが約束したためロシアは自国に撤退し、東西ドイツの統一を承認した。

しかしアメリカのした約束だから当然なのだが、その後NATOはチェコ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニアを加え、ついにはロシアと国境を接しているウクライナを加盟希望国として認めるところまで至っている。

プーチン氏がウクライナを攻めるにあたり「ロシアはこれ以上何処にも撤退出来ない」と言った時、その言葉には少しの嘘も含まれていない。ロシアは自国の国境まで下がってきているのでもうそれ以上下がりようがない。

ロジャーズ氏はインタビュワーの指摘に対して次のように述べている。

その通り。以前言ったように、われわれは勢力を拡大しないと約束した。そして見事に勢力を拡大した。

もうロジャーズ氏は半笑いで説明するしかない。アメリカの行動はほとんどジョークだからである。ロジャーズ氏はこう続ける。

これは勿論政治家が、特にアメリカの政治家がついた初めての嘘ではない。

わたしがモスクワにいて同じことをされれば、攻められたと感じるだろう。

プーチン氏を擁護するわけではないが、彼が自国の国境付近にそんな巨大な敵がいてほしくないということくらいは分かる。

結論

ウクライナについては十分記事を書いたのでもうそろそろ良いだろう。日本や西洋のメディアがあまりに出鱈目を書いているので、バランスを取りたくなっただけの話である。

しかし大手メディアの記事を信じ、ロシアに対して敵対的になっている人で溢れているのを見ると、人間にはほとんど馬鹿しかいないのだなと思う。ロシア国民はNATOが悪いと本音では思いながらも戦争行為に反対しているし、ウクライナ国民もこれは自国とロシアの問題ではないと知っている。

だがそういう記事に惑わされる人々は、例えばロシアへの戦争を提案されると容易に賛成するだろう。トランプ政権時にアメリカ人が嬉々としてシリアにミサイルを打ち込んだのを思い出したい。

彼らにとって自国が敵国にミサイルを打ち込むのは戦争行為ではないらしい。彼らがこそが一番愚かな戦争主義者なのである。