2015年7-9月期のForm 13Fが公表され、米国の機関投資家の買いポジションが明らかとなった。今回はジョージ・ソロス氏とジョン・ポールソン氏のポジションを見てみたいと思う。
ソロス氏は中国株を買い増し
ソロス氏のポジションのなかで一番興味深いものは恐らく、大型の中国株に投資するiShares China Large-Cap ETF (NYSEARCA:FXI、Google Finance)のコールの買いである。1.4億ドル分のETFに対するコールを購入しており、これは即ち中国株が急反発することに賭けているということである。
このデータは9月末のものであり、しかも中国株は9月末を底として実際に急反発しているので、彼の慧眼はぴたりと当たったことになる。ソロス氏は表向き引退しているので、日々のトレードは彼の部下がやっていることになるが、それでも大枠の投資戦略は彼が決めているのだろうと思う。
ソロス氏はこれに加えて5,800万ドル分のAlibaba (NYSE:BABA、Google Finance)株のコールを購入しており、こちらも9月末を境に急反発している。2014年終盤の新興国空売りといい、やはり彼の投資は見事である。
しかしながら、Form 13F上では大きいポジションの一つである中国投資も、300億ドル近いとも言われるソロス氏の総資産のなかでは1%にも満たず、公開された買いポジションを合計しても60億ドルと全体の20%程度であり、ソロス氏が米国株から撤退している様子が見て取れる。現在の市場で株を買いにくい理由は以下の記事で書いた通りである。
ポールソン氏はAllerganで大勝負
これはソロス氏のポジションにも関係することだが、サブプライム・ローンの大暴落を予測し、その年に世界一の報酬を受け取ったジョン・ポールソン氏は、20億ドル近くの資金をアイルランドの製薬会社Allergan (NYSE:AGN、Google Finance)に一点賭けした。ソロス氏のように、大きめの個別株ポジションでも数億ドル程度と、個別株に大きな投資をせず、極力分散させるスタイルとは正反対である。優れた投資家でもスタイルは色々ということである。
ちなみにAllerganにはソロス氏も2億ドルの投資をしている。これは分散されたソロス氏のポートフォリオのなかでは最大のものであり、著名ファンドマネージャー二人が同じ銘柄に最大の資金を賭けたことになる。
結果はどうなったか? タイムリーな話だが、本日11月23日、製薬会社大手のPfizer (NYSE:PFE、Google Finance)がAllerganを買収すると発表した。株価も9月末以来急上昇している。二人とも大当たりというわけである。
結論
いつも説明しているように、Form 13Fは機関投資家の個別株および個別株オプションの買いポジションのみを公開するものであり、空売りや先物のポジションは公表されていない。しかしソロス氏の米国株ポジションの少なさは、市場に対する警戒を示していると言っていいだろう。ソロス氏は最近、債券投資家のビル・グロス氏に預けていた資産を引き上げたが、しかし市場への警戒という点ではグロス氏の相場観と一致しているようにも思える。
いずれにせよ量的緩和で泥酔した市場では、まともな利益の源泉を探すことは難しい。わたしの投資戦略は以下に書いておいたので、そちらも参考にしてほしい。