これまでは逐次報じることはしていなかったが、インフレの世界で気にしなければならない経済データといえば住宅価格だろう。12月分のケース・シラー米国住宅価格指数が発表され、前年同月比で18.8%の上昇となった。
アメリカの住宅バブル
ほとんど20%に達している。それがどれくらいのインフレかを実感するために少し長めの期間でチャートを見てみよう。
これを見て気付く読者は気付くと思うのだが、リーマン・ショックを引き起こした2007年までの住宅バブル以上のバブルが今アメリカで起こっているのである。
現在の物価高騰全般の原因は現金給付と低金利だが、住宅価格については低金利の影響が大きいだろう。インフレを警戒して去年末に利上げを始めたイギリスと違い、アメリカではまだ利上げを行なっておらず、したがって7.5%のインフレが起こっている状況で政策金利はゼロである。
一方で住宅市場に影響を与えるのは長期金利である。長期金利をもとに住宅ローン金利が決定され、住宅ローン金利が低ければ購入者がローンを組みやすくなる。
ローンを組むということは、お金を持っていなくとも住宅を買えるということである。しかしコストがかかる。コストとは住宅ローンの金利である。
だがこの金利がコストにならない場合がある。購入した住宅の価値が金利を上回るペースで上がる場合である。
現在、アメリカの住宅価格は年間18.8%のペースで上がっており、住宅だけでなく食料品やガソリン代なども上がってる中、アメリカ国民はこれからインフレになることを実感しつつある。
こうした住宅価格の高騰がこれからも続くならば、仮にローン金利が10%でも買った住宅の価値が年に18.8%上昇すれば元が取れてしまう。しかもローンとはお金を借りることだから、お金を持っていなくても買えてしまうのである。
ではローン金利の基盤となる長期金利が今どの水準かと言うと、次のような水準で推移している。
年間18.8%価格上昇するものを手に入れるためのコストは年間2%である。あるいは逆に住宅を買わずに賃貸で住み続ければ、家賃が18.8%上昇することになる。
アメリカに住んでいて住宅を買わない理由があるだろうか?
結論
一部の人はいまだに時間が経てばインフレが落ち着くと何の根拠もなく主張しているが、そんな訳がないということが分かってもらえたと思う。
インフレとは自然に悪化するものである。これからものの値段が上がるなら、先に買えるものは先に買っておこうとするだろう。食料品は難しいが、先に買ってそのまま持っておける現物資産といえばまず不動産である。
だからインフレが更なるインフレの原因になり、状況はどんどん悪化してゆく。
資本主義経済は金利上昇という自制機能を備えているが、金利がマクロ経済について何も知らない役人に操作されている間はインフレは悪化し続けるだろう。だからジェフリー・ガンドラック氏は政策金利を撤廃して市場に短期金利を決めさせろと言っているのである。
筆者は実際のところそれが将来起きると予想している。だが物価高騰が本当に1970年代のレベルに達するまでそれは起きないだろう。手遅れにならなければ何もしないのが役人と政治家だからである。彼らの存在意義は何なのだろうか。