Icahn Enterprisesのカール・アイカーン氏が86歳の誕生日に行われたBloombergのインタビューで、コロナ相場の初期に原油をマイナス30ドルで買った話をしている。
コロナ相場における原油価格
最近原油が高騰している。脱炭素政策により採掘企業への融資が禁じられたため、業者が原油を掘れなくなって価格が高騰しているのである。
アイカーン氏はこの上げ相場に参加しているかどうかを聞かれ、次のように答えた。
原油は1バレルあたりマイナス30ドルで買った。
マイナス30ドルである。覚えている人も多いだろうが、原油価格はコロナ初期にマイナス30ドルになったのである。チャートを見てみよう。
2020年4月にマイナス40ドル程度まで行っているのが分かるだろう。
当時、コロナが世界的に流行し、あらゆる都市でロックダウンが行われ、誰も車や飛行機を使わなくなった。それで原油の需要が急激に落ちたのである。
アイカーン氏はマイナスの原油価格について次のように説明している。
マイナスとはつまり原油をもらってくれる人にお金を払うということだ。誰も原油を貯蔵出来なかったからだ。
当時、誰も原油を使わなくなったため、原油が行き場をなくし、貯蔵施設が世界的に満杯になった。貯蔵施設では足りなかったので原油タンカーが貯蔵施設として使われたが、そうすると世界中のタンカーが満杯になった。
もう本当に置くところがなくなったので、原油を持っている人は受け取ってくれる人を探し始めた。だが誰も受け取れなかったので、受け取ってくれる人に報酬を払い始めた。つまり原油価格がマイナスになったのである。
筆者は当時原油が底値だと見て先物を買っていたが、マイナス30ドルになった直近の限月のものは買っていなかった。直近の限月の先物がマイナス30ドルを下回って取引されているのを見て、明らかに異常な安値だと思ったが、その限月のものは買えなかった。原油まみれにはなりたくなかったからである。
しかしアイカーン氏はマイナス30ドルで原油を買ったという。彼はこう述べている。
当時マイナス30ドルだったものが今では90ドル以上で売られている。同じ賭けが出来るほど頭の良い人はこの国には居なかったと思う。
同じ賭けをしたいと思っていた人は居ただろうが、貯蔵施設がなかったのではないか。しかし貯蔵施設がなければ買えない状況でアイカーン氏はどうやって原油を買ったのだろうか? 彼はこう続ける。
だから原油を買って自分の製油所に置いておいた。
製油所を持っていたようである。
結論
この話から得られる教訓はこうである。優れたトレーダーになりたければ、製油所の1つや2つは持っておかなければならない。
これは半分冗談だが、半分冗談ではない。筆者にこれが出来ず、彼に出来る理由は彼が投資先の経営に参画するアクティビストだからだ。マクロの投資家は投資先の企業の製油所を使うことはない。だがアクティビストにはそれが可能である。
また、彼は天然ガスの採掘企業も買ったと言い、エネルギー価格がマイナスの谷底から現在の高さにまで上がったことについて次のように言う。
だがそれは予想出来ただろう。世界がエネルギーと電気を必要とするということは予想が出来ただろう。
だが暴落時、人々は一時の状況に飲まれてその判断が出来ない。暴落があれば売りたがり、高騰していれば買いたくなる。その逆が出来る人だけが投資で成功することが出来る。
アイカーン氏はエネルギー相場について、コモディティ投資家には嬉しく、消費者には嬉しくないコメントを述べている。
これらの投資は開花した。電気をヨーロッパやアジアに供給しなければならないからだ。だから今でも長期的にエネルギー資源に強気だ。
脱炭素政策のまったく不必要な成果である。