2015年3Q日本のGDP内訳: 消費増税からやや回復の兆し、量的緩和が不動産市場に好影響

11月16日、内閣府は2015年7-9月期のGDP速報値を発表した。実質GDPは1.08%(前年同期比、以下同じ)の成長となり、前期の確報値1.00%に続き、消費増税直後のマイナス成長からやや回復している様子を見せた。

例によって報道では前期比のマイナス成長ばかり報じられているが、統計上の季節調整は上手く行っておらず、トレンドを見るためには同じ四半期同士で比べる必要がある。以下、GDP成長率内訳のグラフを見ながら内容を精査しよう。

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弱々しくも回復しつつある個人消費

まずは個人消費だが、前期の0.46%に対し今回は0.74%の成長と、弱々しいことに変わりはないが、回復しつつある。この程度では回復トレンドとは言えず、誤差の可能性もあるが、目に見えて悪化していないことは確かだと言えるだろう。

しかし、更に内訳を見れば、家計の消費0.71%に対し持ち家の帰属家賃を除いたものは0.62%と、不動産価格の上昇が見えない部分で個人消費を押し上げていることが分かる。これは量的緩和による低金利の結果である。この傾向は以下の投資にも見ることができる。

回復する住宅投資、沈む非住宅投資

投資だが、こちらは内容によって明暗が分かれた。住宅投資が前期の-3.31%から5.73%へと回復したのに対し、非住宅投資は1.45%から-0.08%へとマイナス成長に逆戻りした。

個人消費がまだ弱々しく、世界経済も需要不足であるため、企業は設備投資を行おうとしない様子が見て取れる。政府は企業に無理矢理設備投資をさせようとしているが、何度も言うようにデフレとは供給過剰であり、物があふれているのに新たに物を作る設備投資などを行えば、コストが嵩んで赤字になってしまう。言うまでもないが、設備投資は強要するものなどではないのである。

一方で住宅投資が息を吹き返したのは、上記にも書いた通り、全体的には奮わない経済においても量的緩和で不動産は好調だと言うことだろう。

輸出入は微増

最後に輸出入だが、輸出は前期の1.96%から3.01%、輸入は0.96%から1.60%へやや加速した。この数字はドル円と世界経済の減速次第であるので、ここではこれまでの記事を参照するに留めておく。

結論

以前にも書いたが、消費増税によって腰折れした日本経済は、量的緩和による低金利と円安によって延命されている。個人的にはもっと悲観的であったので、1.08%でもポジティブ・サプライズであり、金融市場が大きく崩れずに円安が進行すれば2016年はそこそこの経済成長が見られるのかもしれないが、いずれにせよ2017年に消費再増税が控えており、そこでまた勢いを削がれることはほぼ間違いない。

ここから中長期的には、日本は日本の、米国は米国の、それぞれ成長頭打ちの要因があり、金融相場以外で株価が上昇することは難しいだろう。米国の実体経済については以下の記事を参考にしてほしい。

しかし、いずれにせよ量的緩和を終了し利上げに向かっている米国では金融相場は起こりようがなく、米国株の上昇なしに日本株が上昇しうるかどうかである。

一方で、高い失業率が飛躍的に改善しているユーロ圏は唯一投資の機会があったのかもしれないが、パリの同時多発テロで不安定要因が一気に顕在化した。今のところは経済に大きな影響はないと見ているが、状況が激化しなければの話である。そうならないことを切に祈っている。