レイ・ダリオ氏、環境サミットで脱炭素に警鐘、原油業者を賛美

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がアブダビ・サステイナビリティ・ウィーク・サミットでインフレと脱炭素政策について語っている。

脱炭素と原油価格高騰

ダリオ氏は環境サミットに参加しながら次のような言葉から始める。

原油採掘業者がいることを神に感謝すべきだ。

「サステイナビリティ」の名前が付いた場でこのような発言をしたのは世界でダリオ氏くらいなのではないか。何故ダリオ氏はこのような発言をしたのか。原油価格が高騰しているからである。

勿論これは今アメリカで話題となっている7.1%のインフレの大きな原因の1つである。

原油相場が上がればガソリン価格は高騰し、電力価格は上がる。何故そうなっているかと言えば、化石燃料を嫌い脱炭素政策を推し進める人々が原油採掘業者への融資を強制的にストップしているからである。資金の干上がった原油採掘業者は当然原油が掘れなくなり、原油の供給が足りなくなる。

これはあまり大手メディアでは報じられていないと思うのだが、脱炭素とは単に積極的に太陽光や風力を推進するということではなく、原油など化石燃料への資金供給を強制停止させ、原油や天然ガスを足りなくさせる強硬策なのである。

それで原油価格や天然ガス価格が高騰し、ヨーロッパなどでは貧困層が日本より厳しい冬を暖房なしで過ごさなければならない状況になっている。

火に油を注ぐ脱炭素政策

ダリオ氏は次のように言う。

グリーンな経済への移行はスマートなやり方で行う必要がある。移行を急ぐのは危険だ。物価高騰が問題となっている。

世界最高の投資家の1人であるダリオ氏には、このまま脱炭素を強行すれば原油相場がどうなるか、目に浮かぶように分かっているのである。同じことをマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏も言っている。

というか、化石燃料の供給を強制的にストップすれば化石燃料の価格が高騰するのは小学生でも分かることではないか。彼らは本当に分からなかったのか? あるいは電力価格が高騰して人々の生活が苦しくなることなど、脱炭素の人々にはどうでも良いのだろうか。

原油相場より状況の悪い天然ガス相場

だが原油価格はまだ良いかもしれない。原油はタンカーで簡単に運べるため、世界の一部地域で採掘が滞っても他の地域から運んでくることが容易である。ガソリン価格高騰は日本人も実感しているところだが、それでもこの程度のインフレで済んでいるのはそういう理由である。

しかし天然ガスはそうはいかない。天然ガスは気体のまま運ぶと体積が大きすぎるため、冷却して液化天然ガスとして運ばなければならない。普通のタンカーでは運ぶことが出来ず、一部地域で価格が高騰しても他の地域から運んでくることが簡単ではない。

結果として天然ガスは地域の価格差が大きく、脱炭素政策を強行したヨーロッパでは天然ガス価格が一時10倍近くになるなどの非常事態となっている。フランスでは価格高騰に現金給付で対応しようとしているが、言うまでもなくインフレはより酷くなるだろう。

結論

こうした人々は、現金給付を行い、ものの供給を止めると物価が高騰するということが本当に分からないのだろうか? 普段政治的に一方に肩入れする発言を極力避けようとするダリオ氏が脱炭素政策に警鐘を鳴らしているのは、このままでは本当にエネルギー価格がとんでもないことになるからである。

当然それはインフレが原因で崩壊の瀬戸際に立たされている株式市場にも影響を与える。

大体、大量の補助金を投じて作られたにもかかわらず現在雪に埋もれているソーラーパネルや、風が吹かなくなれば何の役にも立たなくなる風力発電が電力の安定供給源になるわけがない。

こう言っては申し訳ないが、世界の問題の大半は脱炭素などリベラル派の政策から来ている。移民政策ではヨーロッパでの無料の生活費にそそのかされた中東人がヨーロッパを目指して地中海で大量に溺れ死に、脱炭素政策では貧困層がヨーロッパの厳しい冬に凍えることになる。リベラルの人々は社会的弱者に恨みでもあるのだろうか。本当に一度ちゃんと考えてみてもらいたい。インフレは人災である。