米国の中央銀行、Fed(連邦準備制度)は米国時間で10月27日から28日、金融政策決定会合であるFOMC会合を行い、利上げについて議論を行う。結果は28日に発表される。
個人的には10月の利上げはないと考えており、市場の意見も同様のようである。金利先物市場は10月利上げの確率を5.7%としている。利上げがないと考える理由は以下の通りである。
第一に、Fedから次の会合で利上げをするというメッセージが出ていない。Fedが金融引き締めに動く際には、市場を驚かせないよう事前に記者に情報をリークするなどして、投資家に心の準備をさせるものであるが、現時点でFedのそういう動きは見られていない。
第二に、今回の会合ではイエレン議長の記者会見がない。利上げを行う場合、その後金利は継続的に上がってゆくのか、それとも二度目の利上げまである程度時間を置くのかということを丁寧に説明しなければ、株や債券が急落する可能性がある。12月の会合には記者会見があり、年内に利上げをするとすればこちらだろうと思われる。
以上の理由により、今回のFOMC会合については市場の注目は高くなく、利上げ見送りという結果だけが出てくると多くの投資家が考えているが、個人的には今回の会合に非常に注目している。今回の会合が、恐らくはFedの不明確な意図を明らかにするものとなると考えているからである。
10月の会合に注目すべき理由
先ず、市場ではFedが利上げをする気がないのに利上げを話題にし、市場を不用意に不安定にしているという批判がある。確かに、Fedはいまだ今年中に利上げをするのかはっきりしない態度を示しており、しかもそのために市場が荒れているのは事実であり、このFedの態度は不可解だと思われている。
そこでわたしが考えている仮説が、Fedは株式市場を緩やかに下落させることで量的緩和バブルを軟着陸させようとしているというものである。これについては前回のFOMC会合のあとに記事を書いた。
イエレン議長は2015年5月に、株式市場は過大評価されており、潜在的な危険があると述べた。この時株式市場は急落で反応したが、イエレン議長はこの時も市場を無用に不安定にしたのだろうか?
イエレン議長の真意
個人的にはイエレン議長はそれほど馬鹿ではないと考えたい。彼女がそのように発言したのであれば、そこには意図があったはずである。Fedが株式市場にバブルがあると考えており、それを軟着陸させたいとすれば、利上げのカードをちらつかせ続けることで株式市場が緩やかに下落してゆく状況はFedの目的に適っているのではないだろうか?
これらのことは推測に過ぎないが、いずれにせよ今月の会合ではっきりするだろう。米国株は8月末からの急落から大分回復しており、利上げが延期されることを織り込みつつある。論点はFedがこのような金融相場の復活を良しとするかどうかである。
結果の何処を見るべきか?
FOMC会合の結果で注目すべきは、利上げに賛成する委員の数である。前回の会合ではリッチモンド連銀総裁のラッカー氏が利上げを主張し、その他すべての委員の反対によって却下された。もし今回の会合で利上げを主張する委員の数が増えているとすれば、それはFedが株式市場の浮かれ過ぎを咎めようとしているのであり、上記の仮説が正しいということになる。
利上げ賛成のほかに、議事録でタカ派になるという可能性もあるので、そちらにも注目したい。一方で利上げに賛同する委員の数が増えず、議事録もハト派のままであり、株式市場が上がるようであれば、仮説を修正しなければならない。
投資戦略
今回の会合に関連してどのようなポジションを取るか? 個人的なポジションについて言えば、先ずは金価格のプット・オプションの買いであり、これはFedがタカ派に動いたときに利益が出るものである。会合後はコールの売りに切り替えたい。
一方でドル円の買いは継続しており、同時にコール・オプションの売りを行っているが、現時点でオプションのポジションは少ない。ドル円がこれ以上上がるようであれば、金のプットの買いを減らしてドル円のコールの売りに軸足を徐々に移してゆく。オプションについてはオプション入門の記事を書いた。今後の不安定な相場では非常に重要になるだろう。
とりあえずはこの戦略で来週を迎えたいと思う。仮説が正しいと証明されるか、修正を強いられるか、楽しみである。投資家の仕事は仮説を立て、それを逐次修正してゆくことなのである。
ジョージ・ソロス氏も同じように仮説を立てながら戦略を考えてゆく様子を著書「ソロスの錬金術」に記しているので、そちらも参考にしてほしい。プラザ合意でドル円をどうトレードしたかなどを日記のように記録したものであり、わたしのものよりも参考になるはずである。